写真:イギリスのドー​​バーにあるドーバー港Photo:Dan Kitwood/gettyimages

【ロンドン】英国の公衆衛生当局者は当惑していた。全面的なロックダウン(都市封鎖)導入で、11月下旬頃までには国内大半の地域で新型コロナウイルスをほぼ封じ込めていたにもかかわらず、不可解なことに、英南東部のある地域では感染者が急増していたためだ。

 1人の発症者から多数に感染が広がる「スーパースプレッダー」イベントか、職場でソーシャルディスタンス(対人距離の確保)規定を無視したか、違法なホームパーティーで人が集まっていたか――調査に乗り出した疫学者らは当初、こうした予想を立てていた。だが、そのいずれの事例も発見されなかった。行き詰まった疫病学者は、ウイルスのゲノム変異を分析する科学者チームに協力を依頼した。

 12月8日、「COVID-19ゲノミクスUKコンソーシアム」と呼ばれるグループがコロナ変異種を発見。9月下旬に発生した感染拡大の中心地からほど近いケント州で患者の検体から、23の変異が見つかった。翌日には、ロンドンで検査を受けた患者からも同じ変異種が確認された。