2021年にトヨタ自動車の執行役員として決算発表に臨むトヨタ自動車の近健太氏 Photo:JIJI
トヨタ自動車が2月6日、トップ交代の人事を発表した。業績が比較的、好調な中、わずか3年での社長兼CEOの交代は異例といえる。4月から社長兼CEOに就く近健太氏は、同社の豊田章男会長の“忠臣”といわれるが、どんな人物なのか。長期連載『自動車 “最強産業”の死闘』の本稿では、異例のトップ人事を徹底分析する。(ダイヤモンド編集部副編集長 千本木啓文)
ウーブンとトヨタ不動産の役員として
豊田家の信頼を勝ち得た近氏
トヨタ自動車の社長兼CEO(最高経営責任者)の佐藤恒治氏の前にトップを務めた3人はいずれも4年以上、社長を務めていた。豊田章男氏(現会長)の在任期間は14年、その前の渡辺捷昭氏は4年、さらにその前の張富士夫氏が6年である。
そのような中で、佐藤氏が3年で社長の座を譲るのは異例といえる。同氏は4月から、トヨタの副会長として、日本自動車工業会の会長など業界団体や財界での活動に力を入れる。6月に予定する定時株主総会以降はトヨタの取締役からも外れる。
では、新たに社長に就任するCFO(最高財務責任者)の近健太氏とはどんな人物なのか。一言で言えば、謙虚な姿勢と忠実な仕事ぶりが評価されて出世した豊田会長の“忠臣”である。
トヨタが2月6日午後、社長交代を発表した記者会見でも、近氏が控えめな人物であることはひしひしと伝わってきた。近氏はネイビーのスーツに、ネイビーに白いストライプのネクタイという地味な装いで登壇。社長への抜てきの内示を受けた際の気持ちを聞かれると、「大変びっくりして、頭が真っ白といいますか……、(その後、トヨタの役員からトップ人事の狙いなどを聞いたが)あまりよく覚えていない」と答えた。
こうした服装や発言からは、謙虚さが感じられるが、近氏はトヨタグループで近年、最高幹部として重用されてきた。
実は、近氏は、佐藤氏が2023年に社長に就くと同時に、副社長を1年で退任し、自動運転のソフトウエアなどを開発する子会社、ウーブン・バイ・トヨタに代表取締役CFOとして送り込まれた経緯がある。本体から外れていたのだ。しかし、近氏はその当時から、次期社長候補としてトヨタにカムバックするとみられていた(詳細は特集『史上最強 トヨタ』の#9『トヨタ傀儡政権“ブレーン”の顔ぶれ、鍵は「影の内閣6人衆」と「EV新設組織」』参照)。
トヨタ幹部は当時、「副社長3人が同時に降格となったが、その中でも近氏は特別で、復活のチャンスがある。豊田会長の長男、豊田大輔氏がシニアバイスプレジデントを務めるウーブン・バイ・トヨタを任されたことからも信頼の厚さが分かる」と話していた。
詳しくは後述するが、社長就任を発表した会見では、近氏がトップになってからも、豊田会長に対する忠誠心が揺るがないことを示す発言が飛び出した。発言には、近氏が「トップ」としてではなく、豊田会長の「右腕」として役割を発揮するつもりであるかのような内容も含まれていた。
次ページでは、近氏の人物像に迫るとともに、近氏に続く豊田会長の最側近であり、将来の社長候補として浮上した2人の実名も明らかにする。







