ニーナ・ファムさんは疲労感と体力低下に見舞われ、大量の投薬を受けた。米国初のエボラウイルス感染者となった彼女は、米国立衛生研究所(NIH)に救急車で運び込まれた。米国で恐らく最も権威ある医療施設の中の最も厳重に安全管理された一室で彼女は治療を受けた。だがファムさんは主治医が誰かを知らなかった。防護服に身を固めた姿では、いずれにせよ見分けがつかなかっただろう。6年前、直接ファムさんの治療に当たった見知らぬ男性は、今や米国で最も顔を知られている医師、すなわちNIH傘下の国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)のアンソニー・ファウチ所長だ。「とても心を落ち着かせてくれる存在だったのを覚えている」。ファムさんはインタビューでこう語った。「彼が自信に満ちていたおかげで、私自身がこれに打ち勝つのだという強さと自信を持つことができた」