『独学大全──絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法』が10万部を突破! 本書には東京大学教授の柳川範之氏が「著者の知識が圧倒的」、独立研究者の山口周氏も「この本、とても面白いです」と推薦文を寄せ、ビジネスマンから大学生まで多くの人がSNSで勉強法を公開するなど、話題になっています。
この連載では、著者の読書猿さんが「勉強が続かない」「やる気が出ない」「目標の立て方がわからない」「受験に受かりたい」「英語を学び直したい」……などなど、「具体的な悩み」に回答。今日から役立ち、一生使える方法を紹介していきます。
※質問は、著者の「マシュマロ」宛てにいただいたものを元に、加筆・修正しています。読書猿さんのマシュマロはこちら
[質問]
どうすれば、生物の教科書に書いてあることが理解できるようになりますか?
はじめまして。読書猿さんの力をお借りしたいことがあります。
私は大学生です。今期から、高校では選ばなかった生物(分子生物学)を学びはじめました。しかし、教科書をうまく読むことができず、挫折しそうです。
最初に選んだ教科書は、Bruce Alberts『Essential 細胞生物学』です。基本的な教科書らしいのですが、ほとんど書いてある意味がつかめません。目次を書き写したり、節ごとに要約をしたりしても、同じでした。
次に、もっと短くてわかりやすい入門書がないかと考えて、ブルーバックスから出ている森和俊先生の『細胞の中の分子生物学』を読みました。この本はとてもわかりやすかったです。
わかりやすかった理由のひとつは、言葉の定義がはっきりしているからだと感じました。たとえば、DNA、遺伝子、ゲノムなどのキーワードの違いがはっきりと述べられていて、自分はいくつかの言葉の意味を誤解をしていたのだと気づきました。
そこで、教科書が読めなかったのは、単語の意味の理解をあいまいにしていたからだと結論しました。今は、羊土社のキーワードブックやwikiを使ってあいまいな単語があれば調べることにしています。他社の教科書と記述をつき合わせることもしながら読み進めています。しかし、こうまでしても理解できた気がしません。
同じような感覚を味わったことがあるのは地球科学だけです。それ以外の科目では、今までこんなことありませんでした。
読書猿さんにお聞きしたいです。一体どうすれば、生物の教科書に書いてあることが理解できるようになりますか?
ここは「急がば回れ」でいきましょう
[読書猿の回答]
教科書の使い方から勉強の仕方まで色々問題があるように感じますが、そのレベルなら一つ一つ不明な単語を調べるよりも、履修されていない高校生物まで戻った方が「急がば回れ」で結局速いと思います。
教科書はお持ちでないだろうと思うので、書店で買える大人向けの生物やり直し本を、たとえば『カラー版 忘れてしまった高校の生物を復習する本』あたりを、時間をかけずに通読してみてください。『細胞の中の分子生物学』をお読みになっているのなら、すぐに終わるでしょう。
それでも足りない場合は、書き込みノート式の教材を1冊通せば、用語に関する知識は定着します。
同じ用途で、実に学習参考書っぽいつくりの、大学生物学の導入本としては、『大学1年生の なっとく!生物学 (KS一般生物学専門書)』という本もあります。知識の記憶に適します。
大人向けの生物やり直し本が簡単すぎると感じる場合は、ブルーバックスの『カラー図解 アメリカ版 大学生物学の教科書』を。全5巻に分冊されていますが、原書は1冊本の大学向けのやさしい教科書です。