『独学大全──絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法』が10万部を突破! 本書には東京大学教授の柳川範之氏が「著者の知識が圧倒的」、独立研究者の山口周氏も「この本、とても面白いです」と推薦文を寄せ、ビジネスマンから大学生まで多くの人がSNSで勉強法を公開するなど、話題になっています。
この連載では、著者の読書猿さんが「勉強が続かない」「やる気が出ない」「目標の立て方がわからない」「受験に受かりたい」「英語を学び直したい」……などなど、「具体的な悩み」に回答。今日から役立ち、一生使える方法を紹介していきます。(イラスト:塩川いづみ)
※質問は、著者の「マシュマロ」宛てにいただいたものを元に、加筆・修正しています。読書猿さんのマシュマロはこちら
[質問]
『独学大全』という本にとても興味があります。
でも780頁もあると聞いて、本を読むのが苦手なので、とても読めそうにないと、あきらめました。でも読みたいんです。どうすればいいですか?
書物は待ってくれます
[読書猿の回答]
どんな書物も読まない人を助けることはできません。けれど「読めない」と言う人はまだ何とかなります。なぜならその人は想像の上では既に読み始めているからです。現実にはその書物に触れたことがなくとも、想像上読むことを始めているからこそ、想像上で挫折する=読めないと諦めることができる訳です。
では何から始めればいいのか。
私はこの本の著者なので完全にポジショントークですが、まずは『独学大全』を手元に置いておかれることをおすすめします。
理由はいくつかあります。
ひとつは、この本の中にも書いてあることですが、「書物は待ってくれる Books can wait.」からです。
あなたの言うとおり、今のあなたにこの本を読む力が本当に無いのだとしても、誰もあなたを責め立てはしないし、少なくとも書物はあなたを苦しめたりしないでしょう。独学者は、誰かにまた何かにあわせるのでなく、事情と寿命の許す限りにおいて好きな速度で学びを進めるものです。どれほど足早に学ぶことも、ゆっくり進むことも許されます。
一方、書物は自分の方からは何もしません。そうして読み手の成長や上達を、いつの日にか読まれることを、じっと待ち続けます。だからこそ、書物は今も、独学者にとって欠くべからざる伴侶となります。
理由のさらにもう一つは、これもこの本の中に書いてありますが、何事であれ最も難しいのは着手することであり、それさえできれば、かなりのことがなんとかなるからです。
着手する前は、人はこれから取り組もうとする作業の困難さを過大評価しがちです。それも、できるかできないかの両極端の評価をしがちです。
『論語』雍也第六に、次の一節があります。
「力足らざる者は、中道にして廢す。今女(なんじ)は畫(かぎ)れり」
(力が足りないものは途中でやめてしまうものだ。今おまえは最初から諦めている)
実際は100%できないとしても、30%か10%かは分かりませんが、いくらかできることはあるものです。
そして最後に、実のところ『独学大全』はあなたのような人のために書いた本です。
その厚さに怖気づくあなたには、この本はすぐには届かないでしょう。もっと読むことに自信を持った人や、自信がないにもかかわらず「えいやっ」とばかりに手にとった人がまずこの本を読み始めるでしょう。その人達の熱が人から人に伝わり、いつかあなたにも届くかもしれません。
信じてもらえないかもしれませんが、かつて私は今のあなた以上に読むことが苦手でした。この本には、そんな私が今程度に読めるようになった経験と技術を詰め込みました。
いつかあなたがこの本を開くときが来たら、きっとお役に立つと思います。