10月1日に東京駅がリニューアルオープンした。ドーム型の屋根を持つ赤煉瓦の駅舎は、大正ロマンを彷彿とさせ、訪れる人を魅了して止まない。しかしこの新生東京駅、ただの人寄せスポットではない。JR東日本が「空中権取引」という耳慣れない手段まで使って資金を捻出したというだけあって、リニューアルの背景には壮大な計画が垣間見える。新生東京駅は、首都経済にどのようなインパクトを与えるのだろうか。(取材・文/岡 徳之、協力/プレスラボ)
実は知っていそうでよく知らない
古くて新しい「新生東京駅」の全容
「丸の内駅舎は皇居に向かって『土俵入り』をしている姿に見える」
建築史家の藤森照信教授は、10月1日の「新生東京駅」の完成を記念した「東京ステーションフォーラム」でこう話した。なるほど確かに、大銀杏を結う横綱のような存在感、そして皇居への畏敬を表わす土俵入りのような姿に見える。
都市開発は、人々の生活や経済活動に大きな影響を及ぼす。そう考えれば、東京駅のリニューアルはJR東日本(東日本旅客鉄道)のビジネスに止まらず、首都東京の都市様式に大きな影響を及ぼすことも想定できる。
ニッセイ基礎研究所の社会研究部門に所属する土堤内昭雄氏は、自身のレポートの中でこう報告している。
「アメリカ・ボストン市のビッグディッグ・プロジェクトは、都心部とウォーターフロントの分断を解消するために、高速道路の地下化と地上の公園化を15年以上の歳月をかけて実現した。また、韓国・ソウル市の中心部を流れる清渓川(チョンゲチョン)の復元は、高速道路を撤去、水質を改善、人中心の岸辺親水空間を整備するなどして、多くの人の賑わいを取り戻すことに成功した」
どの国、どの地域でも市街の中心に位置する駅のリニューアルも、同様に都市再編を促すきっかけとなる可能性が高い。今回の東京駅リニューアルと、その周辺環境が相乗効果を生み出せば、ターミナルシティ全体の活性化につながることも考えられる。JR東日本は、新生東京駅の可能性をどうのように見据えているのか。また、それが首都圏経済に及ぼすインパクトはどれほどのものか。
本題に入る前に、まずは知っていそうでよく知らない新駅舎の概要をチェックしていこう。