全九州を網羅する九州最大の鉄道会社、JR九州。そのJR九州が、鉄道だけに固執しない、「鉄道を基軸とした生活総合サービス業」へのシフトで注目されている。目下、旅行業、不動産業、ホテル・ゴルフ場経営のほか、病院・高齢者介護、農業、飲食業などの非鉄道分野にも数多く乗り出している。
明治22年の開業から国鉄時代を経た今、そのビジネス環境も大きく変わった。本業の鉄道だけでは喰えないこの時代、「新たな顧客の創造」は避けて通れない課題だ。
株式上場も視野に入れたJR九州が、今年4月に発表した中期経営計画で描くのは、連結売上高に占める鉄道運輸収入“以外”のシェアの引き上げ。目標達成年度の2016年には、売上高3700億円のうち「6割超」を鉄道運輸以外の収入で占めたいとしている。
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今年3月、主要子会社であるジェイアール九州フードサービスが、上海市華山路に日本料理店を出店した。同社は東京・赤坂見附に和食「うまや」を展開しているが、同店はその上海1号店に当たる。アジア地域における飲食分野の展開も、JR九州の重要な戦略のひとつと位置づけられている。
3階建ての家屋に151席を用意。料理は“JR九州プロデュース”だけあって、オール九州をカバーする各県のメニューがズラリと並ぶ。「博多の明太玉子焼き」「長崎の角煮」「大分の鳥天」など――メニューを繰るだけでもワクワク感があり、文字通り「九州の味巡り」を堪能できる。
そして同店の大きな強みのひとつが、ランチタイムは60元(1元=約12円)前後、夜でも予算は350元程度というリーズナブルな価格設定だ。「接待としても遜色ない内容なのに、価格が非常に合理的」と、中国人客の間でも評判が高まっている。