見えない現金製造機を充実させて、
利益率を引き上げる

林教授 これまでに教えたことを総動員して、もっと深く考えてみたまえ。

カノン わかりました。まず税引き後当期純利益を増やすには、営業を強化したり、売れる商品を開発して売上高を増やします。それから、費用を減らすには手っ取り早くムダな費用を削ります。どうですか?

林教授 経営者代行らしくなってきた。では、総資産を減らすにはどうしたらいいのだろう。

カノン 「ビジネスプロセス」に詰まっている商品や売掛金を取り除く。それから、高性能の「現金製造機」に投資する。どうでしょうか?

林教授 かなり良くなったね。だが、まだ総務部長止まりだ。

カノン じゃあ、こういうのはどうですか? 見えない現金製造機を充実させて、利益率を引き上げる。違いますか?

林教授 経営者にはその発想が大切なんだ。つまり、人材、技術、組織力、顧客とのネットワーク、ブランド等といった目に見えない資産を増やすこれらは利益を生み出す強力なエンジンといっていい。

ROAが極端に低い会社の経営者は、なぜか現金を生まない固定資産を手放そうとはしないのだよ。投資の失敗を認めたくないからだろうね。

カノン なるほど。

林教授 思い切ってお金を生まない固定資産を処分して、新しい機械に替えることを検討しなくてはならない。だからいくら従業員が頑張っても、業績が上向くことはない。こういう経営者がいる限り会社はよくはならないね。

カノン 父も同じです。何しろワンマンで他人の言うことを聞きませんから。でも、本音は現状を変えるのが恐ろしいのでしょうね。そんな気がします。

林教授 なるほど。君はやさしいね。そろそろ君の出番かもしれないよ。

林 總(はやし・あつむ)
公認会計士、税理士
明治大学専門職大学院 会計専門職研究科 特任教授
LEC会計大学院 客員教授
1974年中央大学商学部会計学科卒。同年公認会計士二次試験合格。外資系会計事務所、大手監査法人を経て1987年独立。以後、30年以上にわたり、国内外200社以上の企業に対して、管理会計システムの設計導入コンサルティング等を実施。2006年、LEC会計大学院 教授。2015年明治大学専門職大学院 会計専門職研究科 特任教授に就任。著書に、『餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?』『美容院と1000円カットでは、どちらが儲かるか?』『コハダは大トロより、なぜ儲かるのか?』『新版わかる! 管理会計』(以上、ダイヤモンド社)、『ドラッカーと会計の話をしよう』(KADOKAWA/中経出版)、『ドラッカーと生産性の話をしよう』(KADOKAWA)、『正しい家計管理』(WAVE出版)などがある。