そんな中、ネットが急速に発達し、スマホを見る人が圧倒的に増えて、書店に通う人も激減し、書店の倒産が相次いだのだが、2016年頃を境に、前述したような「おしゃれ系書店」が次々と創業。欧米や日本の書店を参考にしたといわれているセンスのいい店づくりで全国展開するようになり、この3~4年で中国の書店事情は一変した。

 背景にあるのは政府による書店支援だ。政府は2016年から「全民閲読(国民読書)運動」を展開し始めた。これは国民全体の文化レベルを底上げしようという運動だ。政府が書店の入居するビルのテナント使用料の補助を行ったり、税の優遇措置などを行った結果、一等地にあるショッピングモールに入居する書店が増えた。そして、民間のおしゃれ系書店が従来とは異なる場所に増えていき、そこに人々が集まってきたという経緯がある。

安藤忠雄氏が設計した書店が話題
日本関係の書籍も多い

 近年、話題になった民間の書店チェーンといえば、安藤忠雄氏が設計した上海の「新華書店」のほか、「方所書店」「中信書店」「西西弗書店」「言几又書店」などがある。

 いずれも書籍の点数が充実しているという以外に、書棚のデザイン、ライトの当て方などにも凝っており、雑貨の販売やカフェ、クラフト教室などの習い事の場が併設されているという特徴がある。

 一言でいうと「書籍もある居心地がいいアートな複合文化空間」という感じなのだ。私自身も中国各地の書店巡りをしたことがあるが、書店内に階段状の椅子があって座って本を読むことができたり、雑貨を眺めたりすることができて、長時間いても飽きることがなかった。

 また、中国の書店で感じるのは日系の書籍の多さだ。前述した蔦屋書店は日系の書店だから当たり前といえるかもしれないが、同店だけでなく、ここ数年、中国各地で私が見かけたおしゃれ系書店の多くが、日本関係の書籍や雑貨を数多く扱っている。

 例えば、北京を中心とする「西西弗書店」は全国で200カ所以上チェーン展開しているが、私が2019年に訪れたときには村上春樹や東野圭吾の書籍を中心として、たくさんの日本の作家の小説の翻訳本が目立つところに積み上げられていた。同じく「おしゃれ系」の代表格である四川省発の「言几又書店」も同様で、売れ筋本のコーナーには日本関係の書籍が非常に多い。

村上春樹の書籍が目立つ北京の「言几又書店」
村上春樹の書籍が目立つ北京の「言几又書店」(筆者撮影)

 もちろん、中国の書店なので、中国のベストセラー本のほうが数としては圧倒的に多いのは当たり前なのだが、日本関係の書籍は上記の2人の作家の本をはじめ、夏目漱石、川端康成、黒柳徹子、渡辺淳一、三島由紀夫などの本がめじろ押しで、ある程度の面積を誇る書店なら、どこに行っても必ずといっていいほど置かれている。それは、私が見た限りでは、欧米文学や欧米のビジネス書よりも多いとさえ感じるほどだ。