この製品を日本で唯一生産しているクイック・ロック・ジャパンの河合元浩社長が語る。

「バッグ・クロージャーの生産量は年間30億個以上で、長らく微増が続いています。コロナ禍でもパン業界の景況に連動する形で安定経営を維持できており、最近は野菜や焼きそばの麺、チョコなどを入れる袋にも弊社の製品を使っていただいています。日本以外では韓国、中国、香港、台湾、モンゴル、タイ、ミャンマー、ベトナム、インドなどにも卸していますが、まだ海外ではパンが袋にすら入っていない状態で売られているケースも多く、これからの販路だと考えています」

 もっとも、バッグ・クロージャーを使用するためには専用の設備も必要だ。大手スーパーなど自家製でパンを焼いているところや、個人経営のパン店などは、大規模な生産工場を持っていないケースが多い。そのため、袋詰めの際にはビニタイ(樹脂製の帯の中にワイヤーを通した結束材)やシールなどを使用する傾向があるという。

プラットフォームの強み
継ぎ目と強度に技術が集約

 バッグ・クロージャーは、大規模な生産工場を構える製パン会社などによって使用されているが、その際にはクイック・ロック・ジャパンの専用機械を使う必要がある。同社の強みは、このプラットフォームビジネスにあるといっても過言ではない。

「海外には競合他社もいますが、日本のお客様は品質に対して求めるものが高いため、参入してくるのは難しいでしょう。仮に参入してきたとしても、海外から設備などのアフターケアやメンテナンスを行うのは難しいですし、日本に工場ごと移転してくる会社もまずありません。なぜなら、そもそも袋の留め具の市場はとてもニッチな世界で、単価も決して高いものではありませんからね。日本でバッグ・クロージャーを作っているのは弊社だけですから、パン業界全体に迷惑をかけないためにも、とにかくまずは安定供給を第一優先とする責任感を持っています」

 技術力の高さも海外勢の参入を許さない要因の一つだ。

「バッグ・クロージャーは、ジグソーパズルのように約4000個が一列につながったロール状の状態で、製パン工場に納品されています。このロールを専用の機械にセットして、高速スピードで食パンの封を閉じていくため、一つずつきれいに外れるようなつなぎ目を入れておかないと、変なところで割れてしまったりします。また強度もポイントで、軟らかすぎると封を閉じられないし、逆に硬すぎると袋が破れてしまうことも。さらに、バッグ・クロージャーには穴が開いていますが、この穴の形や大きさも何十種類とあります」

 同社はアメリカの外資系企業の日本法人だ。1952年にアメリカで創業しバッグ・クロージャーを開発。1980年前後から世界展開に乗り出した。日本法人が設立されたのは83年のことだが、その経緯について、河合社長は「運も大きかった」と振り返る。

「弊社が日本に入ってくるまでは、パンの留め具の主流はビニタイでしたが、これは針金(金属)を使った製品です。当時、日本では食品への異物混入などの事件が起こり、食の安全に対しての意識が高まっていたため、量販店が製パン業界に金属検知を要求するような時代でした。そんなタイミングのときに、弊社がポリスチレン(プラスチック)製のバッグ・クロージャーを日本へ持ち込み、広まっていきました」