「なんであんなこと言っちゃったんだろ」「こう言えばよかった」
大事な相手と話した日の夜ほど、このように布団の中で後悔することがある。励ましたつもりが傷つけてしまった。正しいことを言ったはずなのに、距離ができてしまった。大切な人との関係ほど、言葉選びに悩んでしまう。そんな人のために書かれたような一冊が『頭のいい人が話す前に考えていること』で、著者の安達氏は、本当に頭のいい人は、自分の大切な人を大切にできる、と説きます。本記事では、「大切な人にこそやらないこと」について、本書からひもといていく。(構成/山守麻衣)

頭のいい人が話す前に考えていることPhoto: Adobe Stock

「良かれと思って」が、なぜすれ違うのか

家族やパートナー、親しい友人が悩んでいるとき、つい口を出したくなる。
「それはこうしたほうがいいよ」「そもそも、その考え方が問題なんじゃない?」
良かれと思って言ったアドバイスが、なぜか相手を黙らせてしまう。
正しいことを言っているはずなのに、相手の表情が曇る。そんな経験はないだろうか。
安達氏は、そのすれ違いの構造を解き明かしている。

「アドバイスするな」という教え

本書には、著者がコンサルタントとして入社したときのエピソードが出てくる。

「コンサルに入ってまず、簡単にアドバイスするな、意見を言うな、とにかく相手に話してもらえ、と徹底的に教えられました。コンサルはアドバイスする仕事だと思っていた私は驚きました」(p.111)

アドバイスする仕事なのに、アドバイスするな。
この一見矛盾した教えの裏には、深い理由がある。

「知識は披露するのではなく、だれかのために使って初めて知性となる」(p.111)

知識を持っていると、つい披露したくなる。「こうすればいい」と教えたくなる。
でも、それは相手のためではなく、自分の優秀さを確認するためになっていないか。

「教えてやろう」は、だいたい自分のため

安達氏は、「聞くこと」の落とし穴を具体的に示す。

「人の話を聞いているときに、『反論』で頭がいっぱいになってしまうなど、次に自分が話すことで頭がいっぱいになっている人がいます。これでは人の話をちゃんと聞くことはできません。(中略)“教えてやろう”は多くの場合、単なるおせっかいであり、聞き手は教えてもらうことを望んでいません」(p.229-230)

大切な人ほど、ここを踏むと致命傷になる。
正しさの押し付けは、相手の気持ちの逃げ場を塞ぐからだ。

「正しいアドバイス」でも、人は動かない

本書の指摘で、特に印象に残ったのがこの部分だ。

「いくらアドバイスが正しくても、人は動きません。人は、理屈ではなく、感情で動くからです。(中略)『何を言うか』より『だれが言うか』が重要だからであり、アドバイスを受けて納得し、行動に移すのは、その相手をよほど尊敬し、慕っている場合だけなのです」(p.238-239)

正しいアドバイスをしても、相手が動かない。
それは、アドバイスの内容が間違っているからではない。
「この人に言われたくない」と思われているからだ。
逆に言えば、信頼されていれば、多少言葉が拙くても相手は耳を傾けてくれる。

では、大切な人が悩んでいるとき、何をすればいいのか。