学生時代にスポーツにのめり込んだ著者は、農作業にも競争を持ち込めば生産性が上がることに気づいた。ネギむきの作業で、「今日は誰が何コンテナむいたのか」という実績を表にして毎日貼り出した。たったそれだけのことで、かつては午後3時までかかっていた作業が、午前中に終わるようになった。そして、「あの人は8コンテナもむいた」「あの人、今日は11コンテナいったらしい。どうしたらそんなことができるのだろう」と、社員がそれぞれに工夫をしだすようになったのだ。工夫して結果が出れば、楽しくなってくるのが人間だ。皮むき班は、今では会社平均を引き上げようと張り切っているそうだ。

◇5本つかむか、6本つかむか

 出荷時の段ボールへの詰め込み作業では、ちょっとしたルールを徹底することで効率化を図っている。2Lサイズというサイズのネギは、段ボールに30本入る。この段ボール詰め作業をするとき、絶対に片手で3本ずつ、両手で計6本を掴み、全5回で入れなければならないというルールがある。

 もしこれを、5本・6回作業にした場合、1日で計算すると200回分の作業が増えることになる。人件費にすると1年間に60万円もの差が出る。「6本・5回、5本・6回でもどっちでもいいじゃないか」というわけにはいかないのだ。

◇従業員が生き生きと働ける環境を整える

 ねぎびとカンパニーは、2019年に山形県ベストアグリ賞の最優秀賞である農林水産大臣賞を受賞した。受賞の大きな理由は、それぞれの事情に合わせて好きな時間だけ仕事ができる、という労働形態だ。「午前中の2~3時間だけ働きたい」「夕方の数時間だけ働きたい」といったニーズに、柔軟に対応できる仕組みを構築している。

 従業員が楽しく働くことほど、生産性を上げる方法はない。そのために社長がするべき仕事は「仕組みを変えること」だ。農作業を「競技」のようにしたのものその工夫の一つである。軍隊のように強制しなくとも、それぞれの特性を生かすことで、個々の生産性を上げることができる。まるで部活に打ち込む中高生のように、従業員が自ら工夫して切磋琢磨していくなかで、技術レベルが業界平均を突き抜け、結果的に会社の売上が上がる。それが著者の思い描く最高の会社だ。