「良い会社」を「安く」買うだけでは不十分…勝てる投資家は“3つ目の条件”で仕掛ける
ゴールドマン・サックスに入社し、マネージング・ディレクターに就任、アジアのトレーディングチームを率いた。その後、200兆円超の運用残高を誇る世界有数の機関投資家・ゆうちょ銀行で投資戦略を牽引。そんなマーケットの最前線を知り尽くしたトレーダーが、個人投資家が一生使える「オルカン」「S&P500」の“次の投資術”を徹底指南した初の著書『最後に勝つ投資術【実践バイブル】 ゴールドマン・サックスの元トップトレーダーが明かす「株式投資のサバイバル戦略』(ダイヤモンド社)。投資初心者でも実践できるよう、徹底的にわかりやすく投資手法を体系化。ゴールドマン・サックス仕込みの「投資思考」や「オルカン+4資産均等型」といった実践的なポートフォリオ(資産配分)の構築方法、有望な個別株の見つけ方まで、「オルカン」「S&P500」の“次に知るべき”ノウハウが満載!

【ゴールドマン・サックスの元トレーダーが教える】「いつか上がる」は悪魔の言葉…“万年割安株”の泥沼から脱出し、資産を増やす「起爆剤」の見つけ方Photo: Adobe Stock

カタリスト(相場がいつ気づくか)
「万年割安」の泥沼――日本市場に潜む「バリュートラップ」

ビジネスモデルの秀逸性も、広義のバリュー(割安)性も評価できる会社であっても、長い間投資家に注目されず、株価が割安な水準で放置されたままというケースは多いです。

日本の株式市場ではかなり頻発する事象で、割安だと思って買ってもいつまでも株価が上がらない「バリュートラップ(割安のワナ)」と呼ばれます。

5年、10年といった超長期で投資を考えているのであれば、会社が利益を上げ続けてさえいれば純資産が積みあがって、最低でも純資産の積み上がり分くらいは株価が上昇する日がやってくる、という考え方も正解でしょう。

眠れる株価を叩き起こす「起爆剤」

一方、長くても1~2年程度の投資期間で考えるときは、「その会社のバリュー性に市場がいつ気づくのか」という視点が大事になってきます。

そこで目を向けたいのが、「カタリスト」(相場を大きく動かすきっかけとなる材料やイベント)なのです。

株式市場は、買い手と売り手の需要と供給によって価格が成立します。そのため、自分以外の多くの投資家がその会社の割安感に気づき、実際に買おうとするまでは株価が上がりません

【解説】具体的な「変化の合図」を知る

「良い銘柄なのに、なぜか上がらない」というジレンマから脱出し、資金効率を劇的に高めるための最後の鍵、それがカタリストです。

では、具体的にどのような現象が「眠れる株価」を叩き起こす合図になるのでしょうか。市場が再評価を迫られる典型的なカタリストには、いくつかのパターンがあります。

最も分かりやすいのは、「株主還元の強化」です。増配や自社株買いの発表は、会社が「株価を意識し始めた」という強力なメッセージとなり、投資家を呼び寄せます。

また、「市場区分の変更(東証プライムへの昇格など)」や「アナリストによる新規カバレッジ(調査開始)」も重要です。これらは、今までその企業を知らなかった機関投資家や外国人投資家の目に触れる機会を強制的に作り出すため、新たな買い手が現れる直接的な要因となります。

「時間」というコストを管理する

なぜカタリストが重要なのか。それは、投資において「時間」も貴重なコストだからです。

たとえ株価が将来2倍になるとしても、それに10年かかってしまえば、年利換算での魅力は薄れてしまいます。一方で、カタリストを見極めて1年でその水準に達すれば、回収した資金を次の有望株に回すことができ、資産形成のスピードは飛躍的に向上します

「いつか上がる」ではなく「今、上がる理由があるか」を問うことで、資金が長期間拘束される「機会損失」のリスクを避けることができるのです。

ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)
あってこそのカタリスト

ただし、注意点があります。これまでの第1、第2の関門(ビジネスモデル、バリュー)を無視して、カタリスト(材料)だけで飛びつくのは「投機」であり、ギャンブルです。

土台となる企業価値がしっかりしているからこそ、カタリストが点火した時に爆発的な上昇力が生まれます。「3つの関門」はどれか一つを選ぶものではなく、3つが揃った瞬間こそが、私たちが自信を持って資金を投じるべき「正解」のタイミングなのです。

※本稿は『最後に勝つ投資術【実践バイブル】 ゴールドマン・サックスの元トップトレーダーが明かす「株式投資のサバイバル戦略』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。