税理士
1974年東京都生まれ。東京都立大学卒業後、専門学校講師、会計事務所勤務を経て、高橋創税理士事務所を新宿二丁目に開設。 開業したものの顧客を増やしていく為の営業方針が定まらず苦戦する中、酒好きが高じたためかドリンクをオーダーすることで税理士に相談をできるイベント「確定申告酒場」を新宿ゴールデン街のバー「無銘喫茶」で開催。そこで、相談者の素朴な疑問に触れるうちに「税金のことを楽しく伝える」ことに喜びを感じ、雑誌のコラム、YouTube、プロレス興行での「確定申告マッチ」などであまり堅苦しくない税金ネタを発信するようになる。 著書に『フリーランスの節税と申告 経費キャラ図鑑』(中央経済社)、『図解 いちばん親切な税金の本20-21年版』(ナツメ社)などがある。
ライター
1975 年宮城県生まれ。東北大学卒業後、新卒で大手SIerに就職。約15年SEとして勤務したのち、当時執筆していたブログをきっかけにライターに転身。「誤解のないように仕様書を書く」「クライアントから課題を聞き取る」といったSEの経験を活かし、エンジニア系記事を手がけるほか、テレビ番組レビュー、体験レポート、コーポレート系サイトなど幅広く執筆。また「路線図マニア」としてメディアにも出演。共著書に『たのしい路線図』(グラフィック社)『日本の路線図』(三才ブックス)
Twitter @inomsk
著者からのメッセージ
この本は、確定申告の「現実逃避」から生まれました。
筆者はフリーランスのライターで、毎年自分で確定申告をしています。領収書を集めて、仕分けて、帳簿をつけて……と、確定申告はなんやかんやと面倒な作業が山積み。しかも提出時期は2月から3月。時期的に年度末が迫っており、本業だって忙しい。パソコンに向かいながら、くぅ~と悲鳴にもならぬ声を半開きの口から漏らしつつ思ったのです。「桃太郎だって確定申告してるのか」と。
あれだけ金銀財宝を持って帰ってきて、税務署が黙っているわけないだろう。どんぶらこと水に流さず、桃太郎だって確定申告をちゃんとやってほしい。おじいさんとおばあさんに手伝ってもらいながら帳簿を埋めて、なんか数字が合わないんだけど? と悩んでほしい。
……あれ? ということは、あの財宝に所得税がかかるってこと? そうなると犬・猿・キジにあげたきびだんごは「経費」になるのかな。いや、あの財宝はもともと村人たちの物なんだから、儲かったという話じゃないのでは……?
年度末が迫るのに考えれば考えるほど面白くなり、その年の確定申告をなんとか終えてから、抱えていた疑問をWebサイト『デイリーポータルZ』で「桃太郎のきびだんごは経費で落ちるのか」という記事にしました。税理士監修のもと、『桃太郎』だけでなく、『わらしべ長者』や『鶴の恩返し』など、昔話のあれこれを令和の税制で考えてみたのです。この記事が好評となり、あれよあれよと話が進み、この本が出るに至りました。現実逃避もやってみるものです。
記事を書くにあたり、「こんなすっとこどっこいな疑問に答えてくれる税理士さんはいませんか」と呼びかけたところ、紹介してもらったのが高橋創税理士でした。
高橋さんは新宿2丁目に事務所を構える税理士でありながら、新宿ゴールデン街のバー『無銘喫茶』のオーナー。店で「確定申告酒場」を開いて税金相談に答えたり、YouTubeチャンネルを運営したり……と、税理士のお堅いイメージを覆すべく精力的に活動されています。事務所のPRのため、プロレスのインフォマーシャルマッチも企画したとか(還付金をもらいたいレスラーたちが凶器を必要経費で揃えたりするものだったそう)。
そんな高橋さん、もちろん昔話にもノリノリでお付き合いいただきました。本書の打ち合わせでも「固定資産税がかかりそうな昔話ないですかね」など、後にも先にもこんな会話ないだろうなという内容で、終始笑いが絶えないものになりました。
ちなみに本書に登場する同じ名前の税理士はフィクションであり、高橋税理士とは(一部)違う人格です。あらかじめご了承ください。
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現実逃避から生まれた本書ですが、「日本の昔話」を通じて、楽しみながら税金の基本を学べるものになりました。
登場する昔話は『桃太郎』『舌切り雀』『浦島太郎』『かちかち山』など、誰しも聞いたことがあるものばかり。
「きびだんごは経費になるのか」「大きなつづらは贈与税の対象か」「竜宮城にいるあいだ、税金を滞納するとどうなるか」などなど、思わぬ事態に右往左往する登場人物たちの様子を見守るうちに、自然と税金の知識が身につくようになっています。
「税金のことを知ったほうがいいのはわかるけど、なんとなく後回しにしている」
「経費とか控除とか名前は聞いたことがあるけど、勘でやり過ごしている」
「今さら基本的なことを聞くのは恥ずかしい」
「税金の本は専門用語が多くてわかりにくい」
……
そんな方でも気楽に読めて、わかりやすいものを目指したつもりです。あの日、半開きの口からうめき声をあげていた自分でも読めるように、と。
本書を通じて、税金の世界が少しでも身近なものになったら幸いです。
井上マサキ
(『桃太郎のきびだんごは経費で落ちるのか?』はじめに より)
本書の主な内容
第1章 鶴の恩返し~鶴の「食費」は経費になる?
鶴の世話にかかったお金は経費になるのか?
鶴が反物を織ったのは「誰の意思」なのか?
ふすまの向こうは「経費の対象」
ユーチューバーの「洋服代」は経費になる?
第2章 桃太郎~きびだんごは経費で落ちるのか?
奪い返した財宝は「所得」になるのか?
税金の世界では違法か合法かは関係ない!?
きびだんごは現物支給の「給与」にあたる
オリンピックとサッカーW杯、報奨金が「非課税」なのは?
第3章 わらしべ長者~物々交換に税金はかかる?
物々交換は「譲渡所得」とみなされる
物々交換を何度もしたら、譲渡所得はどうなる?
第4章 分福茶釜~茶釜に化けたタヌキは「器具備品」!?
芸を見せたタヌキ、場を設けた古道具屋、税金を払うべきなのは?
税金の世界に「未成年」はない
タヌキは「器具備品」であり「減価償却資産」
第5章 うばすて山~置き去りにした母が残した遺産、相続できる?
「うばすて山」に置いてきた母の遺産、相続できる?
親を故意に死亡させた場合は「相続する権利がない」
第6章 舌切り雀&笠地蔵~大きな「つづら」に贈与税はかかるのか?
「いらないもの」も贈与税の対象になる!
お地蔵さまからもらった品は、誰からの贈与か?
年間110万円以上の贈与も非課税に!? 気になる「贈与税の法改正」
第7章 かぐや姫~「かぐや姫被害者の会」の告発
結婚の条件である「貢ぎもの」は課税対象になるのか?
「パパ活女子」も確定申告が必要!?
もし本当に贈り物をもらったら、月に帰る前に確定申告を
第8章 かちかち山~昔話のなかの「医療費」
「因幡の白ウサギ」皮をむかれたウサギは医療費を申告できるか?
「かちかち山」ウサギが売りつけたやけどの薬は医療費控除の対象?
「こぶとりじいさん」は“美容整形”!?
第9章 三年寝太郎&金太郎~子供がいる家庭の税金
三年寝太郎は「扶養控除」の対象になる
シングルマザーの金太郎母は「ひとり親控除」の対象
最終章 浦島太郎~税金を払わないままだとどうなる?
竜宮城に行っているあいだに「延滞金」が発生!
浦島太郎に忍び寄る「差し押さえ」の影
差し押さえられた動産や不動産は「公売」で売却される