麻生財務相の「一律10万円の再給付を行うつもりはない」との発言に対する批判は、そもそも的を射ているのか(写真はイメージです) Photo:PIXTA

現代のマリー・アントワネット?
麻生財務相はなぜ集中砲火を浴びるのか

 飢えに苦しむ庶民に対して、「お腹が減ったらケーキを食べればいいじゃない」と無邪気に語ったマリー・アントワネットが、庶民の怒りの導火線に火を付けてしまい、絞首台に送られた――。というのは有名なフィクションだが、それと似たようなことが令和日本で起きてしまうかもしれない。

 麻生太郎・副総理兼財務相が、閣議後の記者会見で、前回の緊急事態宣言時のように全ての国民に対して1人10万円の特別定額給付を行うつもりはない、と発言をしたことに対して、「庶民の苦しみがわかっていない」「上から目線」「早く辞めろ」などと、SNS上で庶民の怒りが爆発しているのだ。

 この炎上にガソリンをぶっかけているのが、6億4845万円という閣僚ナンバーワンの資産、皇室にも連なる「生まれついての上級国民」という麻生氏のイメージであることは、言うまでもない。事実、SNSでは麻生氏を「庶民の敵」と位置付けて打倒を呼びかけ、国民一律10万円給付を実現させるためのツイッターデモを募っている人もいる。まさしく、マリー・アントワネット状態なのだ。

 と聞くと、「自業自得だ、国民の痛みを想像できないようなボンボン育ちの政治家は、とっとと引退しろ」と冷ややかに見ている人も多いだろう。ただ個人的には、この件で麻生氏がここまでボロカスに叩かれるのは、ちょっと気の毒のような気もしている。

 断っておくが、筆者は自民党支持者ではないし、菅政権のコロナ対策にも大いに不満を持ち、この連載でも批判をさせていただいている。また、麻生氏個人に何の思い入れもない。日本の政治がうまく機能しない原因は、個人の特性よりも構造的な問題によるところも大きいと考えているので、もし仮に明日、麻生氏が財務相を辞めても、「ふーん、次は誰?」くらいの感想しか出てこないのだ。

 にもかかわらず、なぜ麻生氏を擁護するようなことを言うのかといえば、まず大きな理由は、この「発言」がマスコミの伝家の宝刀ともいうべき「言葉の切り取り」によって生み出されたものだからだ。SNSなどで多くの人が引用し、拡散しているのは、1月19日の「産経ニュース」の《一律10万円の再給付「するつもりはない」 麻生財務相》という記事だ。

《麻生太郎財務相は19日、閣議後の記者会見で、緊急事態宣言の再発令に伴い昨年実施した国民一律に現金を配る「定額給付金」の再支給を求める声が出ていることについて、「国民に一律10万円の支給をするつもりはない」と否定した》