今の時代、家族の誰かが認知症になることは珍しくない。では、相続が発生したとき、相続人に認知症罹患(りかん)者がいたらその手続きはどうなるのだろうか。適切なステップを踏まなかったため、節税の計画が水の泡となってしまった事例を紹介しよう。(税理士 木下勇人)
資産家一家を襲った
「悲劇」とは
認知症罹患者は年々、増加傾向にあります。平成27年1月に厚生労働省が発表した「新オレンジプラン」には、2025年には約700万人(約5人に1人)が認知症に罹患すると、驚きの数字が発表されています。
今回は、認知症罹患者が相続人であったことが原因で生じたAさんの事例をご紹介しましょう。
資産家の父は財産を5億円保有しており、推定相続人は長男であるAさんと、母、妹(長女)の3人です。母の実家も資産家であったため、多額の遺産相続をした母の所有財産も父と同額(5億円)あります。