女性が声を上げるなどして近所に助けを求めたため、谷内被告はその場から逃走。女性は駆け付けた警察官に対し「知らない男だった」と説明していた。防犯カメラに写っていた車から谷内被告が浮上し、その後の調べで5年前、谷内被告が女性に交通違反切符を交付し住所を把握していたことが判明した。

 谷内被告は逮捕される直前、職場に向かう女性の乗用車を追跡したり、職場や自宅周辺で複数回にわたって後をつけたりしていたことも明らかになり、函館地検は逮捕容疑の暴行と脅迫ではなく、強制わいせつ未遂とストーカー規制法違反の罪で起訴していた。

「一目ぼれ」と見逃した巡査

 筆者が全国紙記者として地方支局に配属された約40年前、同様の手口による警察官の事件を耳にして記事にしようと思ったことがある。

 内部事情を知る立場にあった「A氏」から聞いた話だが、要約するとこういう内容だった。

 交通機動隊の巡査が一時停止違反をした女性の乗用車を発見し、白バイで追尾して停車を指示。免許の提示を求め、違反切符に住所を控えたものの「一目ぼれしちゃったから、見逃してあげる。今度、遊びに行くね」と、その場でくしゃくしゃに握りつぶした。女性はそれが冗談(で助かった)と思ったのか、適当な相づちを打って解放されたという。

 数日後、巡査は違反切符に記載していた住所をもとに、女性の自宅アパートを訪問。もちろん、女性は驚いて部屋への立ち入りを拒絶したが、無理やり押し倒された。巡査はその後も女性宅を訪れ、結婚式の打ち合わせをしていた婚約者と鉢合わせしたという。

 婚約者が警察に怒鳴り込んで発覚したが、巡査は強く拒絶されなかったため「好意が受け止められていた」と思い込んでいたらしい。警察は女性と婚約者に「巡査は精神的な病気。被害届を出しても事件にならない」と慰謝料の支払いによる示談を提案。結婚式を控えていたため、女性と婚約者は受け入れたが、その慰謝料は「裏金」から捻出されたということだった。

 十数年前、北海道警をはじめ各地の警察で表沙汰になったから、警察がかつて裏金を捻出していたという事実は、今では誰もが知る常識だろう。

 結局、巡査は処分されなかった。当時の性犯罪は親告罪(現在は非親告罪)で、示談の成立や、加害者からの報復や世間に事件を知られるのを恐れて被害者が告訴しなければ、刑事事件にはならなかったのだ。