「ヒルドイド」が「ヒルマイルド」に
徹底抗戦の構えをとるのはなぜか
頭痛薬の「イブA錠」と同じ有効成分の「アダムA錠」が、薬局で売られています。あくまで個人的な趣味の話ですが、こういうネーミングは私は好きです。「マキロンs」と似たデザインの傷薬に「マッキンZ」という商品があります。英語風に発音すると「マッキンズィー」。なんとなく経営者のかすり傷に効きそうです。
「イブA錠」の製造販売元のエスエス製薬や「マキロンs」の第一三共ヘルスケアにとって、こうした競合商品のネーミングには、売り上げへの影響以上にイラつくかもしれません。
世の中には、イラつく程度では済まない経営者もいて、そういった場合は訴訟になります。医療用医薬品「ヒルドイド」を販売するマルホが市販薬品「ヒルマイルド」を製造販売する健栄製薬に対して、販売差し止めの仮処分申請を行いました。これに対して健栄製薬は「当社の信用と信頼を著しく傷つけ、損なう行為」と、徹底抗戦の構えを見せています。
そして今回の訴訟問題は、通常の類似商品を巡る争いとは少しビジネスとしての背景事情が異なります。「ヒルドイド」と「ヒルマイルド」を巡る紛争について、まとめてみたいと思います。
今回、マルホが健栄製薬に対して提訴したのは、「不正競争防止法2条1項1号に定める不正競争行為に該当する」という主張がその根拠です。この条項は広く周知されている商品と同一ないしは類似の商品を販売することで、消費者に混同を生じさせる行為を制限するものです。
古い事例ですが1983年に東京ディズニーランドが開業した直後、浦安駅の沿道の露店で「ミツキー饅頭」というお菓子が売られていたことがあります。ミッキーマウスと名前や表情がちょっと違うネズミのキャラクターと、目黒エンペラー(目黒の老舗ホテル)に似た建物がパッケージに描かれていたのですが、名前とキャラが違っても類似性で消費者が間違えて買ってしまう以上はアウトだというのが、この法律の条項です。