サステナビリティ経営は
一日にして成らず

 日本でも、一部の企業は、サステナビリティを経営の中核に据えて、事業ドメインの拡大、新規市場の開発、イノベーションの創発といった好循環を実現しています。

斎藤たとえば脱炭素の目標に関して、2050年とか2060年とか、ずいぶん先のことに思えるかもしれません。しかし、サステナビリティを経営の中核に据え、経営陣以下、組織メンバーの意識を変え、脱炭素へと転換していくには、想像以上に時間がかかります。実際、2050年を起点にバックキャストしてみれば、悠長にしてはいられないことが実感できるはずです。

 ところが、歴史のある企業であればあるほど慣性の法則が働いて、こうした変化への対応が遅れがちです。そこで、バックグラウンドの異なる人たちを集めた「サウンディングボード」を設置してみてはどうでしょう。VUCAといわれる時代にあっては、経営陣に忖度することなく正論を述べてくれる、一種のインテリジェントチームの存在は変化を後押ししてくれるはずです。

 そこには、1980年代から90年代半ばに生まれたミレニアル世代やそれ以降に生まれたZ世代を入れるべきです。彼らデジタルネイティブはSDGsネイティブでもあり、旧世代とは考え方も価値観も異なります。また、サステナビリティは、彼らが就職先を選ぶうえで重要な基準の一つになっていることも注目に値します。

関口今回のパンデミックがあらためて教えているように、従来の延長線上で未来を仮定し、それに基づいて経営計画や戦略を立てることの有効性は薄れています。

 アップルがiPhoneを発売したのは2007年でした。手のひらサイズのコンピュータが開発され、わずか十余年の間に、デジタルによるニューノーマルが広がりました。では、サステナビリティはどうでしょう。

 デジタルと次世代を担う若者たちによって、予想以上に速いペースで価値観や行動様式は変わっていくと思われます。このスピードについていくには、いますぐ動くことです。コロナ禍にあっては、業績重視に傾く企業は少なくないでしょう。ですが、「サステナビリティ経営は一日にして成らず」です。

企画・制作|ダイヤモンドクォータリー編集部