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大量生産・大量消費が時代遅れとなりつつある昨今。人々の消費のかたちが「所有」から「利用」へと移行しつつある。マーケティング研究者・久保田進彦氏が、時代の変遷とともに変化する価値観について解説する。※本稿は、久保田進彦『リキッド消費とは何か』(新潮新書、新潮社)の一部を抜粋・編集したものです。

「いま」を読み解くために
持つべき視点とは?

「いま」はどんな時代でしょう。いまを生きる私たちは、他のどの時代よりも「いま」をよく知っているはずです。しかし、いまを説明するのは簡単ではありません。あまりに多くの答えが頭に浮かんできて、とりとめがなくなってしまいます。

「いま」を説明するのが難しい理由はたくさんありますが、1つは小さなことにとらわれすぎてしまうためです。今日起きたこと、今月起きたこと、そして今年起きたことを振り返ってみると、実にたくさんの事件が思い浮かびます。しかし「時代」という大きな観点からみると、どれも小さな出来事だったりします。

 時代の特徴は「時間を大きく束ねる」ことで見えてきます。束ねる時間は、10年、あるいは20年、もっと長くても構いません。たとえば20世紀以降の産業について、時間を束ねて考えてみましょう。

 大まかにいえば、1900年代から1950年代は大量生産や効率化の時代でした。

 アメリカの自動車会社フォードが、きわめて限られた種類の製品を大量かつ効率的に生産する「フォード生産方式」を導入し、車の価格を大きく下げたのは有名な話です。