先行きの見えない2021年。これからは「新しいこと」や「人と違ったこと」を考えるスキルが重要になってくる。だが、「考える」といっても、いったい何をどう考えればいいのか?
そんな人に読んでほしいのが、このたび刊行された書籍『考える術──人と違うことが次々ひらめくすごい思考ワザ71』だ。
著者の藤原麻里菜氏は、「無駄づくり」という異色のコンテンツをネットを中心に展開しており、これまでに何百もの作品を発表、その人気は海外にも波及し、台湾での個展では2万5000人もの観客が殺到、SNS再生数は4000万回にも達する話題の発明家だ。
そんな著者が、これまでに発明を何年も継続してきた中でつかんだ「考えるテクニック」をあますところなく詰め込んだのが本書だ。「何も出てこない……」とうんうんとうなっているなら、本書をパッと開いて、好きなワザを使ってみてほしい。「逆転」「主語変え」「マナー破り」「合体」「似たもの合わせ」……便利に使える思考ワザが満載である。
本稿ではこの『考える術──人と違うことが次々ひらめくすごい思考ワザ71』から特別に、一部を抜粋・編集して紹介する。
「嫌な部分」と向き合うことで
独自の発想が生まれる
独自の視点を持つためには、自分のことを深く知ることが必要です。自分の内奥の欲求や思考、心の揺れ動きなどを日ごろから意識することで、だんだんと自分のことがわかってきて、自分らしいアイディアの個性や方向性が見えてきます。
わたしはすごくネガティブで、いつも余計な心配をしたり、友だちといても疎外感を感じていることが多く、そのうえとてもひねくれていて、幸せな人を見ると嫉妬しか感じません。
こんなにも嫌な人間だけれど、嫌な人間にしか考えられないアイディアがあります。自分のそんなダメなところや嫌なところに向き合うことが、独自の視点を得るための第一歩になるのです。
また、アイディアを考えるとき、他人の問題を勝手に推しはかって考えてしまう人がけっこう多いです。
しかしたとえば、お年寄りを手助けするアイディアを考えたいというとき、自分の中にある「お年寄りの困りごと」のイメージだけで考えていくのは、ちょっと危ない。遠い他者へのイメージには無意識的な偏見や決めつけが含まれていることも多いので、まったくズレたアイディアになってしまったり、ものすごくありがちなアイディアになってしまったりします。
「お年寄りの困りごと」をぱっと考えてみると、「スーパーに買い物に行くのが大変」「耳が聞こえにくい」といったことが挙がるでしょうか。これはとても一般的な思いつきなので、実際、「スーパーの宅配サービス」や「補聴器」など、そうした問題を解決するアイディアはすでにたくさん生まれています。
これでは、わざわざ自分がアイディアを考える意味がありません。独自のアイディアを考えるためには、問題を自分に引き寄せて考える必要があります。
「自分のこと」に引き寄せて考える
遠い他者の問題でも「自分のこと」として考えると、独自のアイディアが生まれてきます。お年寄りのことを考える際も、まずは「自分がお年寄りだったら、どんなことに困るだろう」ということを真剣に想像することから始めます。
すると、「一般的なお年寄り」のイメージから考えるときとは違った困りごとが出てくるはずです。
他人の問題を「自分のこと」に引き寄せて考えるときは、「自分の好きなこと」から考えるのが手っ取り早い。好きなことに対しては、他の人よりも知識や情熱があるはずですし、感情や欲求の引き金にもなるので、いろんな問題が見えてきやすい。わたしは好きなアイドルのことになると、唾を飛ばしながらめちゃくちゃ早口で話します。
他人の問題を考えるときに限らず、好きなことから考えると、次々と思いつくことが出てきます。なので、アイディアを考える際、一度はそのテーマを「好きなこと」に置き換えたり絡めたりして考えてみるのをおすすめします。
シチュエーションによっては、自分の趣味全開のアイディアを提出するのはいかがなものかと思ってしまうかもしれません。たとえば、編集者が出版の企画を提案するときに、自分の好きなアニメやアイドルの企画ばかりを提案するのは公私混同と言われるかもしれません。
しかし、いったん、そういう社会性は捨てましょう。好きだからこそ思いつくアイディアはたくさんあり、愛があるからこそアイディアのディテールを深く追求することができるはずです。
【考えてみる】自分が年齢を重ねたとき、どのような困りごとがありそうか考えてみよう。また、それを解決する方法を考えてみよう。
わたしはアイドルが好きなのですが、足が弱って外出が難しくなったとき、コンサートに行けないのがつらいのではないでしょうか。その問題を解決するアイディアは、どんなものになるでしょう。
VRコンサートというものがあります。360度映像でコンサートを見ることができたら、会場に行けなくても楽しそうです。最新機器の扱いが苦手でも問題ないように、操作はできるだけ簡単にしたいです(下図参照)。
誰でもできる簡単な操作で、360度VRライブを楽しめる。(『考える術』より)
また、コンサート後にアイドルオタクたちとサイゼリヤで語り合うのもコンサートの楽しみの一つです。こういったことが家にいながら可能になるデバイスがあったら最高の未来です。
(本原稿は、藤原麻里菜著『考える術──人と違うことが次々ひらめくすごい思考ワザ71』の内容を抜粋・編集したものです)
1993年、横浜生まれ。発明家、映像クリエイター、作家。頭の中に浮かんだ不必要な物を何とかつくりあげる「無駄づくり」を主な活動とし、YouTubeを中心にコンテンツを広げている。SNSの総フォロワー数は20万人を超え、動画再生数は4000万回を突破、その人気は中国、アメリカ、ヨーロッパなど海外にも広がっている。2016年、Google主催「YouTubeNextUp」に入賞。2018年、国外での初個展「無用發明展――無中生有的沒有用部屋in台北」を開催、2万5000人以上の来場者を記録した。Awwwards Conference Tokyo 2020、eAT2018 in KANAZAWA、アドテック2016東京・関西などで登壇。「総務省 異能vation 破壊的な挑戦者部門 2019年度」採択。最新刊に『考える術──人と違うことが次々ひらめくすごい思考ワザ71』がある。