この背景には、自民党と日本医師会の「蜜月」もある。全国に組織力のある医師会ほど、自民党候補者にとって心強い味方はいない。また、政治資金面でも頭が上がらない。日本医師会の政治団体・日本医師連盟は、自民党の政治献金の受け皿である国民政治協会に、2019年4月に1億円、同年12月5日にさらに1億円を寄付。各地域の医師会も、自公の候補者に手厚い「支援」を行っているのだ。

 緊急事態宣言の延長に加えて、銀座クラブ問題などで自民党の支持率は急落しているが、この秋には衆議院の任期満了を控えている。こんな大逆風の中で、最大の支持団体・日本医師会の機嫌を損ねたら、自民党の「惨敗」は間違いない。

 実際、日本医師会の一部が民主党支持にまわった09年8月の総選挙で自民は惨敗、麻生政権にトドメを刺して、政権交代にも繋がっている。医師会が動くときは「政変」が起きるのだ。

本当にリスクの高い人たちに
最優先でワクチンを届けるべき

 こういう過去の「苦い記憶」を持つ現政権が、間近に控える選挙のため、日本医師会が喜ぶ「病院経営の手助けになるような政策」を次々と実行に移しているかもしれないということは、何とも納得感のある話ではないか。

「そんな私情に囚われて、政策を決めているわけがないだろ」と呆れるかもしれないが、日本の立派な政治家センセイたちが、鶏卵業界から賄賂をもらったり、選挙で金をバラまいたりして、後ろに手が回っているのは紛れもない事実だ。

 緊急事態宣言で国民が我慢をしている中でも、銀座の高級クラブから呼び出されて「同伴」する副大臣もいれば、バレた後に後輩をかばって嘘をつく大物議員もいらっしゃる。どんなに綺麗事を並べても、日本の政治は「私情」で動いているようにしか見えないのだ。

 いずれにせよ、「医療従事者370万人優先接種」は、明らかに理にかなっていない。河野太郎・ワクチン担当大臣の言葉を借りれば、「既得権、権威主義の最たるもの」のように感じてしまう。本当にリスクの高い人のもとに迅速に届ける、という視点での見直しをお願いしたい。

(ノンフィクションライター 窪田順生)