現実味を帯びる医療崩壊
内情はどうなっているのか
連日のように「医療崩壊の危機」が叫ばれている。
日本医師会などは「医療の緊急事態」を宣言、日本看護協会も春の第1波の際に看護師が離職した医療機関が15.4%にのぼったという調査結果を明らかにするとともに、現在看護職員の心身の疲労がピークを迎えており、「限界に近づいている」と述べている。
かねてより懸念されていた医療崩壊がいよいよ現実味を帯びてきたことを受けて、「指定感染症の2類相当措置の見直し」を主張する人も増えてきた。インフルエンザと同じような対応にすれば、医療崩壊は避けられるというのだ。
マスコミがそうした騒ぎ方をしていることで、感染症で高齢者が亡くなることがすっかり「コロナの恐ろしさを象徴する悲劇」ということになってしまったが、実は日本ではインフルエンザでコロナよりも多く人が亡くなっている。昨日、「コロナで亡くなった人が3000人を突破した」とマスコミが報じていたが、昨年インフルで亡くなった方は3575人もいるのだ。
ワクチンや治療薬があるのになぜこんなにも「助けられない命」が出てしまうのかというと、社会のあちこちでクラスターが発生して、高齢者や基礎疾患のある方が感染し、重症化するからだ。
皆さんも、昨年の今頃は少し熱っぽくても、満員電車に乗って会社へ行ってゴホゴホやっていたはずだ。日本全国の小学校や中学校も同じで、軽症の子どもたちがウイルスを広め、学級閉鎖が起きていた。こんな調子で、実はインフルエンザは年間1000万人もの感染者が出ている。
ただ、これだけ凄まじい数の感染者と重症者・死者が出ているにもかかわらず、毎年冬になるたびに「医療崩壊の危機」は叫ばれていない。その理由は明快で、季節性インフルエンザは5類感染症だからだ。
コロナのように、重症患者は指定感染症医療機関でしか受け入れてはいけない、軽症や無症状でも隔離しなさい、検査結果をすべて報告しなさい、といった縛りがない。つまり、1000万人もの感染者が出ても、医療現場の負担は極端には重くならないので、対応できているというわけだ。