日本医師会会長選挙が6月27日、投開票を迎える。日本全体がコロナ禍による緊急事態に陥っていた中で権力争いを演じたことから、世間では眉を顰める向きも多かった。そんな会長選挙の内幕をレポートする。(ジャーナリスト 横田由美子)
現職横倉vs中川氏
旗幟鮮明求め選挙戦過熱
6月27日投開票の日本医師会会長選挙が荒れている。一部では、泥仕合の様相すら見せている。
ようやく落ち着きを見せたとはいえ、コロナ禍のさなか、横倉義武現会長に対し、クーデター的手法で中川俊男現副会長が出馬し、全国各地の両陣営では切り崩し工作が行われている。「かつての自民党総裁選並みに実弾が飛び交っている」とも噂される地域もあるぐらいだ。
地方に住む中堅の医師会員はうんざりした様子で話し始めた。
「当初は“様子見”を決め込んでいた四国でさえ、完全に巻き込まれている。通常なら、現職の横倉会長で即決だったはず。横倉さんは、人格者として慕われているだけでなく、実績もあるし、政界・官界に広い人脈がある。本来なら争う余地はないんです。しかし、会長が立候補をちゅうちょしたことで、中川さんにアドバンテージを与えてしまった。そもそも中川さんは、3年前からひそかに横倉さんを出し抜いて、会長選出馬の準備をしていた。それでも“劣勢”なのですが……。必死の巻き返し工作をはかり、各県に“旗幟(きし)鮮明”を求めている。北海道に地盤のある中川さんと、福岡から出てきた横倉さん。われわれの間では“天下分け目の関ヶ原”とやゆされています」
ただ、そう解説した後ですぐに「横田さん、東京だから様子わかるでしょう? 東京の票読みがわかったら教えて」と、付け加えることを忘れなかった。その言葉からは、情勢次第では、勝ち馬に乗りたいという意図が透けていて、おかしくもあり怖さも感じられた。