「群馬ってどこ?」からはじまった日本留学

 僕は19歳で来日して以来、日本でいやな目に遭ったことがない。

 国費留学生に選出されて教育省から「あなたの留学先は群馬大学です」と通知を受け取った時、もちろん、僕は「群馬」がどこにあるかさえ知らなかった。「ビルマ」のタイピングミスじゃないかと思ったくらいだ(笑)。図書館の地図で日本に「群馬」と呼ばれる街があるということだけを確認して、僕は留学の準備をはじめた。当時、留学先として断然人気があったのはイギリスとアメリカ。でも、僕は日本に行くと決めていた。確信はなかったものの、自分が日本で何か大きなことをやれると感じていたのだ。

 何の予備知識もないままやって来た群馬は、本当にすばらしい土地だった。「田舎」と「都市」の中間といった雰囲気で、車一台あればどこへだって行ける。そして、何よりすばらしいのは人だった。近所のおじさん、おばさんは本当に親切で週末にはよくバドミントンをして遊んだし、寮母さんは僕が風邪などで寝込むたびに食事や身の回りの世話をしてくれた。今でも彼女が作ってくれたおかゆの味、彼女が僕に投げかけてくれた笑顔をよく覚えている。

 日本に対する印象は、その後、就職して今まで少しも変わっていない。こうして起業してビジネスをしていると、人に騙されることは往々にしてある。海外でビジネスを展開している僕の友人からも、その手の話はよく聞く。ところが、僕に関する限り、日本人に騙されたことは皆無と言っていい。