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この連載では、著者の読書猿さんが「勉強が続かない」「やる気が出ない」「目標の立て方がわからない」「受験に受かりたい」「英語を学び直したい」……などなど、「具体的な悩み」に回答。今日から役立ち、一生使える方法を紹介していきます。(イラスト:塩川いづみ)
※質問は、著者の「マシュマロ」宛てにいただいたものを元に、加筆・修正しています。読書猿さんのマシュマロはこちら

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[質問]
 偉い人への媚び方を知りたいです

 私は短くない社会人生活で、年長者や目上の立場の相手から「お前俺のこと舐めてんだろ」と怒られたことが数度あります。年下や目下の立場の相手には礼儀正しい人という評価をされているので、単なる無礼者というわけではなく、おそらくみんなが無意識にしているように人によって態度を変えるふるまいができていないのではないかと考えています。

 偉い人が目下の者にどのように媚びへつらってもらいたいのかが分かる本、あるいはこの人の偉い人への媚び方は天下一品だと感心するような本がありましたら教えていただけないでしょうか。もう「舐めてんだろ」と怒られたくないです。

悪意はないかもしれませんが、失礼すぎます

[読書猿の回答]
 あなたの文章を読んで感じたことを率直にお伝えすると、「悪意はなさそうだから大目に見るけど、普通に失礼な方だな」と思いました。

 あなたは、相手のことを見下したり蔑んだりする方ではないと思います。そういう意味では「お前俺のこと舐めてんだろ」という言い方は正確ではありません。あなたが舐めているのは、対面の相手ではなく、人間関係そのものだからです。

 具体的には「偉い人は媚びへつらってもらいたがっている」という考え方が、人間関係というものを舐めています。

 人間関係は「お互い様」の原理で成り立っています。

 周囲に親切にする人は親切にされる確率が高まるし、相手をぞんざいに扱う人はぞんざいに扱われる確率が高まります。

 大変なときに助けてくれた人には、いつかその人が大変なときに恩返ししたいと思うものです。

 あなたが「偉い人は媚びへつらってもらいたがっている」と無自覚であれお考えなのであれば、あなたの周囲の年下や目下の人たちは、あなたを「媚びへつらってもらいたがっている偉い人」として扱います。彼らからの「礼儀正しい人という評価」は「媚びへつらい」の一種として割り引いて考えるべきかもしれません。

 私の考えでは「こいつは偉い人だから媚びへつらっておこう」というのは、相手を一人の人間ではなく類型として処理することであり、「俺のこと、媚びへつらいで喜ぶような安い人間だと舐めてんだろ」とそれだけでも激高したくなる思考であり行動です。

 偉い人に限らず、多くの人は、ぞんざいには扱ってもらいたくない、まともな人間として扱ってもらいたい、と思っています。

 そして、まともな人間として扱うことの第一歩が、「お互い様」原理です。

 私達の中には「お互い様」原理が効かない人たちがいます。挨拶も親切も受け取るばかりで返さない人、それどころか親切にしてくれる人を食い物にする人、相手の善意を良いことに相手を搾取する人までいます。

 なので、親切にしても、相手から親切が返ってくるとは限りません。相手への働きかけはいつも、裏切られるかもしれない一種の賭けです。

 しかしそれでも、私達が誰かに働きかける(たとえば親切にする)のは、相手のことを賭けるに値する人間であると信じるから、「お互い様」原理が通用するまともな人間であると信用するからです。