インターネットの「知の巨人」、読書猿さん。その圧倒的な知識、教養、ユニークな語り口はネットで評判となり、多くのファンを獲得。新刊の『独学大全──絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法』には東京大学教授の柳川範之氏「著者の知識が圧倒的」独立研究者の山口周氏「この本、とても面白いです」と推薦文を寄せるなど、早くも話題になっています。
この連載では、本書の内容を元にしながら「勉強が続かない」「やる気が出ない」「目標の立て方がわからない」「受験に受かりたい」「英語を学び直したい」……などなど、「具体的な悩み」に著者が回答します。今日から役立ち、一生使える方法を紹介していきます。(イラスト:塩川いづみ)
※質問は、著者の「マシュマロ」宛てにいただいたものを元に、加筆・修正しています。読書猿さんのマシュマロはこちら

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[質問]
私は小さい頃から悪口を言うことが嫌いです

 私は高校生です。私は小さい頃から悪口を言うことが嫌いです。しかし成長するにつれて、周りの友達が悪口を言うようになり、悪口を言わない自分の方がおかしいと感じるようになりました。そして周りの友達のことが怖くなりました。性格のいい人だと思って接していても、仲良くなるにつれて、その人の腹黒さが見え、悪口を言う姿を見て絶望してしまいます。

私は友達に対して理想を求めすぎなのでしょうか。

人類学者のように、観察してデータを取りましょう

[読書猿の解答]
 悪口は教えられるというよりも見真似で覚えるものなので、悪口を言う子たちの周囲には、悪口を、罪悪感ぬきに雑談の一環=人間関係の潤滑油として、使う大人がいたのでしょう。

 雑談は話している当人も大して意味がないと思っていますが、実は誰が仲間になるのかを示すシグナルとなり、人間関係のベースを形成します。つまりどんな雑談をするかがその人の人間関係、人脈、所属する集団を決めてしまうのです。

 悪口を雑談に使う人達は悪口が雑談として消費される社会、自分が不在の時は自分の悪口が人間関係の潤滑油として利用される社会でしか生きられません。このことは自分が生きる社会や集団を選ぶ機会が少ないと実感しにくいと思います。しかしあなたが選択肢を広げる道を進んでいけば、自ずと実感することになるでしょう。

 では今は? 私なら、知らない文化の集団に参与観察にやってきた文化人類学者のつもりで、悪口とそれが発せられる状況を観察してデータを取ります。この人類学者メソッドは強力で、これから入学や就職など新しい集団に移るときに自分を保ちながら適応するのに絶大なる力を発揮します。

 あなたは、同世代の人たちに対して、きっとこんな気持ちにはなれないだろうなと思って書くのですが、私はもう結構な歳なので、悪口を言ってる高校生を見ても「ああ、生まれと育ちは選べないものな」と思って「この腹黒高校生め、最低の人間性だ」とは思わないと思います。

 けれど「普通のこととして受け取ったそれらのものに自分の人生が狭められてしまうことに気付いて、自分で改めるには、もうあまり時間が無いんだぜ」とは思うでしょう。幸いあなたは気付いてしまわれました。よい大人たちに恵まれた幸運を大切に使ってください。