安定的に高収益を上げるビジネスモデルを確立するにはどうすればいいのか。完成されたビジネスモデルを眺めているだけでは、見えてこないヒントがあります。重要なのは、ビジネスモデル確立までを動的に考察することです。医療用機器メーカー「シスメックス」の成長物語から、ビジネスモデルへの「動的な理解」を深めていきましょう。(神戸大学大学院経営学研究科教授 栗木 契)
ビジネスモデルは
いつ定まるのか
ビジネスモデルがとらえるのは、企業の活動をいかに組織化し、ゴールとなる目標を達成するかです。企業という組織体が達成しようとする目標は多岐にわたりますが、広く重要視されるのは収益という目標です。そのためにビジネスモデルは、いかに収益を上げるかの図式として示されることが多くなります。
たとえばアマゾンやネスカフェ・アンバサダーなど、MBAの教室や、マーケティングのテキストなどで語られ、示される各種のビジネスモデルがあります。では、こうしたビジネスモデルは、準備期間を経て事業がスタートし、発展していくプロセスのどの時点で定まるのでしょうか。
ビジネスモデルは、時間をかけて企業が活動を行うなかでできあがっていきます。ビジネスモデルと向き合う際には、その構造だけでなく、確立されるまでのプロセスを伴う「動画」として問題をとらえることが欠かせません。この問題を理解するため一例として、医療用機器メーカー、シスメックスの成長物語を振り返りましょう。