『ストレスフリー超大全』の著者で精神科医の樺沢紫苑さんは、借金玉さんの著書『発達障害サバイバルガイド』について、「このリアリティ、具体性は当事者の経験あってのもの。精神科医や研究者には、絶対に書けません」と絶賛しています。
今回はYouTubeで実現した2人の対談「発達障害サバイバルライブ!(動画)」の内容を抜粋・編集してお届けします。(撮影/疋田千里)
(視聴者の質問)
発達障害が原因で、仕事を20回も解雇されました。障碍者雇用にチャレンジしましたが、トラブル続きで、最後にはクビ。履歴書もボロボロで、この先どうしていけばいいか、途方に暮れています。(34歳・男性)
「挑み続けた自分」を褒めてください
(二人の回答)
借金玉 20回解雇されるというのは、それだけ挑戦を続けてきた証です。その行動力は素直にすごいと思います。失敗体験がない人よりある人のほうが絶対に強いですから。
樺沢紫苑(以下、樺沢) 同感です。すごいことだと思います。
借金玉 Plan→Do→Check→Actionの「PDCAサイクル」ってあるじゃないですか。発達障害のある友人同士でよく話すのが、僕たちはこのサイクルを回すのが苦手だということ。どうなるかというと、「PPPPサイクル」か「DDDDサイクル」に陥ってしまうんです。質問者さんはおそらく後者(DDDD)の状態にあるのだと思います。
それでも経験が得られる分、ただ計画を立てて何もしない「PPPPサイクル」よりも圧倒的に素晴らしいのは言うまでもありません。「20回もダメだった自分」ではなく「20回挑めた自分」を評価し、得られた経験を生かしていく方向に舵を切って欲しいですね。
1985年、北海道生まれ。ADHD(注意欠如・多動症)と診断されコンサータを服用して暮らす発達障害者。二次障害に双極性障害。幼少期から社会適応がまるでできず、小学校、中学校と不登校をくりかえし、高校は落第寸前で卒業。極貧シェアハウス生活を経て、早稲田大学に入学。卒業後、大手金融機関に就職するが、何ひとつ仕事ができず2年で退職。その後、かき集めた出資金を元手に一発逆転を狙って飲食業界で起業、貿易事業等に進出し経営を多角化。一時は従業員が10人ほどまで拡大し波に乗るも、いろいろなつらいことがあって事業破綻。2000万円の借金を抱える。飛び降りるためのビルを探すなどの日々を送ったが、1年かけて「うつの底」からはい出し、非正規雇用の不動産営業マンとして働き始める。現在は、不動産営業とライター・作家業をかけ持ちする。最新刊は『発達障害サバイバルガイド──「あたりまえ」がやれない僕らがどうにか生きていくコツ47』。
ちなみに「PPPPサイクル」の最もよくない例が、「自分は何も行動せず、SNSで人をバカにしたり、批評したりするだけで何かを成し遂げた気持ちになること」だと僕は思います。あらゆる仕事は、行動と、それに伴う結果がない限り前に進みません。そして物事を前に進めるときには必ず行動に対するフィードバックがあります。要するに「挑戦なんて、やってみると9割失敗する」わけです。この痛みを知らないまま、ずっと頭の中でプランを練っていても、自分の中に何も蓄積されません。
樺沢「PPPPサイクル」と「DDDDサイクル」、実感が伴う面白い言葉ですね。私の著書では「インプット/アウトプット/フィードバック」というモデルで説明をしています。今、質問者さんに足りていないのは「フィードバック」の部分だと思います。ぜひ、行動して得られた結果から、得意・苦手を分析して、「うまくいくフィールド」で勝負してほしいと思います。
借金玉 まずは、これまでしっかり頑張ったんだから、1ヵ月でも2ヵ月でも休息をとりましょう。考えをまとめる前には、休息が必要ですから。経験は十分に積んでこられたはずなので、がむしゃらに挑むということをいったんストップして、一度自分を見つめなおす時間を設けてみてください。
精神科医、作家
1965年、札幌生まれ。1991年、札幌医科大学医学部卒。2004年からシカゴのイリノイ大学に3年間留学。帰国後、樺沢心理学研究所を設立。「情報発信を通してメンタル疾患、自殺を予防する」をビジョンとし、YouTubeチャンネル「樺沢紫苑の樺チャンネル」やメルマガで累計50万人以上に精神医学や心理学、脳科学の知識・情報をわかりやすく伝える、「日本一アウトプットする精神科医」として活動している。最新刊は『精神科医が教える ストレスフリー超大全』(ダイヤモンド社)。シリーズ70万部の大ベストセラーとなった著書『学びを結果に変えるアウトプット大全』『学び効率が最大化するインプット大全』(サンクチュアリ出版)をはじめ、16万部『読んだら忘れない読書術』(サンマーク出版)、10万部『神・時間術』(大和書房)など、30冊以上の著書がある。
YouTube「精神科医・樺沢紫苑の樺チャンネル」