会社を伸ばす社長、ダメにする社長、そのわずかな違いとは何か? 中小企業の経営者から厚い信頼を集める人気コンサルタント小宮一慶氏の最新刊[増補改訂版]経営書の教科書』(ダイヤモンド社)は、その30年の経験から「成功する経営者・リーダーになるための考え方と行動」についてまとめた経営論の集大成となる本です。本連載では同書から抜粋して、経営者としての実力を高めるための「正しい努力」や「正しい信念」とは何かについて、お伝えしていきます。

リレーションシップ・マーケティングの3つのポイントPhoto: Adobe Stock

リレーションシップ・マーケティングの極意

「1回のお客さまを、いかにして一生のお客さまになっていただくか」というリレーションシップ・マーケティングについて、前回と前々回でお話ししてきました。

 さらに今回から3回に分けて、私が掴んだリレーションシップ・マーケティングの極意、その3つのポイントについて説明していきます。その3つのポイントとは、以下です。

(1)一番は偉い!
(2)あなたは特別
(3)感動

(1)一番は偉い!

 これは、ビジネスをするにあたって、とても重要なポイントの一つだと言えます。

 昔、まだ私の子供が小学校1年生くらいだったとき、家で食事をしていたら、「父さん、日本で二番目に高い山を知っている? 日本で二番目に大きな湖を知っている?」と聞かれたのです。

 そう言われて考えてみると、日本一高い山が富士山であり、日本一大きな湖は琵琶湖であることは誰でも知っているけれど、二番目と言われると答えが出てきませんでした。

 ちなみに、この答えはセミナーに来ていた元山岳部の方に教わったのですが、日本で二番目に高い山は南アルプスの北岳で、3192メートルあるそうです。それから、二番目に大きな湖は茨城県の霞ヶ浦です。

 一番は誰でも知っています。でも、二番は意外と知られていません。私はそれに気づいたとき、「一番ってすごいな」と思いました。

 そこで、私はコンサルタントの仕事をしていますから、次にこう考えたのです。日本で一番の百貨店はどこだろう、と。私の周りの人たちに聞くと、たくさんの答えが出ました。

「髙島屋」「日本橋の三越」などです。若い人たちに聞くと、圧倒的に多い意見は「新宿の伊勢丹」でした。

 名古屋出身の人に尋ねると、以前は栄の「松坂屋名古屋店」を挙げる人が多かったのですが、今は駅前の「ジェイアール名古屋タカシマヤ」と答えます。

 それから、私の友人の芸術家は「銀座の松屋」だと答えました。理由を聞くと、ディスプレイが日本で一番綺麗だからだそうです。

お客さまは、自分の基準で一番を決める

 ここで述べたことには、とても重要なヒントが隠されています。山や湖の「一番はどこですか」と尋ねたときの答えは、一つしかありません。

 一方、「百貨店の一番はどこですか」という質問の答えには、多くの答えが出てくるのです。それは一体、なぜでしょうか。

 答えは、山や湖の一番というと、一番「高い」山であり、一番「大きい」湖のことです。つまり、何を一番とするかの客観的基準を尋ねる側が決めています。

 しかし、「百貨店の一番はどこですか」と尋ねるときは、基準を相手に委ねています。だから、相手が自分の基準で選ぶことになるのです。つまり「主観的基準」です。ここがとても大切なところです。

 リレーションシップ・マーケティングで、お客さまに「支持者」や「代弁者」、「パートナー」になっていただけるかどうかは、お客さまが「主観的に」自社を「一番だ」と思ってくれるかどうかにかかっています。

 言い換えれば、客観的に一番である必要はないということです。

 もちろん、客観的な一番は、それをアピールすることにより主観的な一番に感じていただける要素とすることはできます。

 しかし、主観的一番でないと、関係を深めてもらうことができないのです。読売巨人軍が好きな人は好き、阪神タイガースを好きな人は好きなのです。主観的です。

 繰り返しますが、このことは、とても大事なことです。このことを理解しておかないと、ビジネスはうまくいきません。お客さまから見て、いかに「主観的一番」になれるかどうかなのです。

 それは、以前にもお話ししたQPSによって決まるのです。

 お客さまはクオリティ、プライス、サービスの組み合わせを見て、自分に一番合っている会社を「一番だ」と思います。

 ですから、自社が一番メインのターゲットにしている顧客層が求めているQPSの組み合わせは、どのようなものなのか、それを見極めて、その顧客層に主観的一番にしてもらえるようにしなければ、お客さまとの関係は深まっていかないのです。

 お客さまが自社を主観的に「二番手の会社だ」と認識しているうちは、「得意客」や「支持者」になってもらうことすらできません。

 お客さまにとっての「主観的一番」になれる要素をいかに見つけ出せるかどうかが、ビジネスで成功するかを決める際に大変重要な要素なのです(この観点で、定期的に自社とライバル会社のQPSを見直してください。素直に謙虚にでしたね)。

(本稿は[増補改訂版]経営者の教科書 成功するリーダーになるための考え方と行動の一部を抜粋・編集したものです)

小宮一慶(こみや・かずよし)
株式会社小宮コンサルタンツ代表取締役会長CEO
10数社の非常勤取締役や監査役、顧問も務める。
1957年大阪府堺市生まれ。京都大学法学部を卒業し、東京銀行(現三菱UFJ銀行)に入行。在職中の84年から2年間、米ダートマス大学タック経営大学院に留学し、MBA取得。帰国後、同行で経営戦略情報システムやM&Aに携わったのち、91年、岡本アソシエイツ取締役に転じ、国際コンサルティングにあたる。その間の93年初夏には、カンボジアPKOに国際選挙監視員として参加。
94年5月からは日本福祉サービス(現セントケア・ホールディング)企画部長として在宅介護の問題に取り組む。96年に小宮コンサルタンツを設立し、現在に至る。2014年より、名古屋大学客員教授。
著書に『社長の教科書』『経営者の教科書』『社長の成功習慣』(以上、ダイヤモンド社)、『どんな時代もサバイバルする会社の「社長力」養成講座』『ビジネスマンのための「数字力」養成講座』『ビジネスマンのための「読書力」養成講座』(以上、ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『「1秒!」で財務諸表を読む方法』『図解キャッシュフロー経営』(以上、東洋経済新報社)、『図解「ROEって何?」という人のための経営指標の教科書』『図解「PERって何?」という人のための投資指標の教科書』(以上、PHP研究所)等がある。著書は160冊以上。累計発行部数約405万部。