欧州連合(EU)が新型コロナウイルスワクチンの調達につまずき、欧米のワクチンメーカーが生産障害に直面する中、一部の欧州諸国は中国のワクチンに頼ろうとしている。そうした動きは、コロナ禍と闘う上で信頼できる同士として売り込もうとしている中国にとって、欧州での影響力を強める追い風となる可能性がある。
加盟27カ国分のワクチンを調達する役割を担うEUはこれまでにドイツ、米国、英国で開発された3種類のワクチンを承認している。だが、購入契約の締結や接種の承認に後れを取っている一方、メーカー側も約束通りにワクチンを供給できずにいる。ワクチン不足はEU域外の欧州諸国でとりわけ顕著になっている。
今のところ、中国のワクチンに救いを求めているのは主に小規模なEU加盟国だ。進まぬワクチン接種に市民がいらだちを募らせる中、主要国にも中国の2種類のワクチンやロシアのワクチンに手を伸ばそうとする動きが現れている。
ドイツのイェンス・シュパーン保健相は1月31日、中国医薬集団(シノファーム)製のワクチンについて、安全性と有効性が確認されることを条件に、EUに承認するよう求めた。オーストリアのセバスティアン・クルツ首相は、シノファームのワクチンを国内で生産したいとの考えを示した。