ワクチンは金融市場にどう影響?
「世界の実験室」イスラエルの現状
新型コロナウイルスのワクチンに関して、日本ではようやくその到着が話題になっているが、すでに海外では接種が着々と進み、効果も可視的なものになってきている。その筆頭が、ネタニヤフ首相自ら「集団免疫に向けた世界の実験室」と称するイスラエルだ。
2月9日現在、人口100人当たりの接種回数は67.8回と圧倒的な世界最速ペースを誇り、2位のアラブ首長国連邦(UAE、45.8回)に大きく差をつけている。「大量に早く購入した」「1回分につき数ドル多く払っても、すぐに誰もがその10倍を払うようになる」(共にネタニヤフ首相)といった判断の速さもさることながら、同国が個人の医療記録をしっかりデジタル一括管理していることで、製薬会社もデータを取りやすいというメリットが奏功したようである。
入手可能な数字を見る限り、その効果はてき面であるように見受けられる。イスラエルではワクチン接種が昨年12月中旬を過ぎたあたりから始まり、新規感染者数(日次)も新規死亡者数(日次)もピークアウトしたといってよさそうに見える。
こうした変化の理由が行動制限の結果なのか、気候の変化なのか、それともワクチンなのか、あるいはそれ以外なのか、疫学の専門家ではない筆者に多くを語る能力はないが、グラフがワクチンの効力に期待を抱かせるものであることは確かだろう。今後、イスラエルで死亡者数が明確に減り、新規感染者数が根絶される展開になれば、いよいよ金融市場でも材料視されるだろう。(図表1参照)
金利上昇、株売りの
イスラエルリスクは高まるか
こうしたニュースは良いニュースに決まっているわけだが、イスラエルの先行きを「金融市場にとってのリスク」と論評する向きもある。そのリスクとは、ワクチンによって新型コロナウイルスとの戦いに終止符が打たれ、昨年来続けられている裁量的なマクロ経済政策が撤収、結果として株価を中心に資産価格が大きな調整を被る、というリスク(以下イスラエルリスク)である。