世界広告「BIG5」に躍り出るも
赤字を救う“公助”の可能性も
敢(あ)えて非デジタル的表現を用いて時計の針を戻すと、昨年12月7日に電通グループは、2020年12月期の連結業績予想(国際会計基準)が237億円の赤字になるとの見込みを発表。(https://www.nikkei.com/article/DGXZASFL07H9S_07122020000000/)
グループ従業員の1割近くに当たる6000人を2021年末までに、限りなく解雇に近い削減へと踏み切ると表明。それに伴う構造改革費用876億円を計上しています。が、その2カ月後の今年2月15日の発表では1595億円へと赤字額が大幅に「増大」していたのです。
更にお復習(さら)いとして再録すれば、「広告業界ビッグ4」英WPP、米オムニコム、仏ピュブリシス、米インターパブリックに次ぐ世界第5位の“地歩”を、東洋の島国に本社を置く「電通」が築く切っ掛けとなったのは2013年3月26日のM&Aです。当時世界8位だった英国のイージス・グループを約4000億円で買収。(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO91489550Y5A900C1000000/)
「電通イージス・ネットワーク社」へ名称変更したロンドンの拠点を海外本社に位置付け、「110カ国・地域で事業展開するグローバル・コミュニケーション・グループ」を標榜します。(https://www.nikkei.com/article/DGXLZO80419570S4A201C1DTA000/)
その後もM&Aを加速。僅か5年で164社を傘下に収め、2019年12月には145カ国・地域に6万6000名の従業員を擁する900社もの多国籍企業改め“無国籍企業”へと急激に拡張しました。
それらに伴い、昨年1月1日に発足した電通グループ全体の売上総利益に占める国内比率は85%から43%へと半減。57%の収益を海外に依拠する構造へと変容を遂げます。が、豪州や中国を含むアジア太平洋地域を始めとする海外部門がよもやの苦戦に直面。2019年9月時点で7886億円まで膨張した「のれん」の減損損失701億円分の計上を昨年2月12日に発表。赤字転落しました。(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO55544130S0A210C2DTD000/)
言わずもがな「のれん代」とは、「買収された企業の純資産」と「買収価額」の差額を意味します。冒頭で紹介した「日経」の“心優しき認識”も今一度、復習しておくと「20年9月末時点で約7300億円あった貸借対照表上の、のれん」を「今回(2020年12月期)の減損で約5900億円に減」らすべく「減損損失は子会社や地域ごとの判断ではなく海外全ての地域をまとめて収益性を見直して1403億円を計上、国内でも数十億円が発生し」ています。
瀕死の重症状態から脱するべく、幼気(いたいけ)にも「自助」努力を続ける「電通」には、日本政府からの「公助」も受けられる可能性があります。
会計上の赤字と同様に税務上の損失を計上することができれば、「繰越欠損金制度」が持株会社の電通グループ及び事業会社の電通に適用されます。仮に赤字転落した昨年から既に適用されていたとしたら、本社登記地の東京都に納付する法人都道府県民税80万円以外は、国税の法人税も地方税の法人事業税も最大10年間に亘って毎年の納付額がゼロ円で済む「合法的」恩恵に浴していることになるのです。
「繰越欠損金制度」(https://tanakayasuo.me/archives/23720)
と申し述べるや、「お前は三百代言の輩か」と烈火の如く反駁される向きも居られましょうから、暫し入念に説明を加えておきましょう。