京都・老舗企業の相続でお家騒動を引き起こした「2通の遺言書」の教訓
京都の老舗企業で起こった「争族」、引き金となったのは2通の遺言書でした Photo:PIXTA

創業から100年以上の歴史がある京都の老舗カバンメーカー「一澤帆布工業」。今から約20年前、3代目社長の信夫氏が亡くなった際の相続をめぐって、相続人である兄弟は激しく対立した。そのきっかけは「2通の遺言書」にあった――。(弁護士 植田 統)

京都の老舗企業で起こった
「争族」問題

 今回は、京都の老舗カバンメーカー「一澤帆布工業」の例を取り上げてみたい。2通の遺言書のどちらが真正かで、兄が会社を引き継ぐか、弟が会社を引き継ぐか、事業承継の行方を左右した事例である。

 一澤帆布工業は、1905年に京都で創業された、麻製の厚布で作る耐久性に優れた写真、登山などの機材運搬用カバンのメーカーである。「一澤帆布製」というタグで有名ブランドとなり、京都土産として定着してきた。

 その一澤家で、相続争いが起きたのは、2001年3月、3代目の信夫(以下、登場人物敬称略)が死亡したときだった。