鈴木氏は郵政行政局長時代の05年、電気通信事業部長のころにNTTコミュニケーションズから受けた接待が露見した。許認可権限を持ちながら飲食を共にし、タクシー券を束でもらっていた。東北新社の事件と似た構造である。

 鈴木氏は「NTTべったり」と省内外で見られ、内部通報で「利害関係者との癒着」が明らかになったといわれている。

 懲戒処分が下されると当面は人事で昇格はできない。役人人生は終わりか、と思われたが、救いの手を差し伸べたのが、当時の「総務省2トップ」の竹中総務相と菅副大臣だった。

 当時の竹中大臣の標的は「郵政民営化」と「NHK改革」だった。いずれも省内外に「抵抗勢力」がいた。切り崩しを任された菅氏は、郵政の現場に人脈を持つ鈴木郵政行政局長を取り込んだ。

 地獄に仏だったかもしれない。鈴木氏は菅氏の忠実な手足となり、その働きぶりが評価され翌年、情報通信政策局長に起用された。

 今度の標的はNHKである。この時に起きたのが、NHK担当課長の更迭だった。

 大臣になった菅氏が打ち出した「受信料2割値下げ」は省内にも異論があった。新聞社の論説委員との懇談で担当課長が「大臣はそういうことをおっしゃっていますが、自民党内にはいろんな考え方の人もいますし、そう簡単ではない」と語った。

 伝え聞いた菅氏は怒り「一課長が勝手に発言するのは許せない」と担当ポストから外してしまった。上司の鈴木局長は、ついたてとなって部下を守ることはしなかった。

おもねれば出世街道
「直言」すれば冷飯

「どういう人物をどういう役職に就けるか、人事によって大臣の考えや目指す方針が組織の内外にメッセージとして伝わる」と菅首相は自著「政治家の覚悟」(文春新書)で述べている。

 利害関係者から接待を受け懲戒処分になっても、自分に忖度し手柄をたてるのに役立つ人物なら引き立てる。公務員倫理への関心は鈍く、「国民全体の奉仕者」より自らへの忠誠。

 菅氏が望む官僚イメージが「天領」とされた総務省に根付いたのだろう。

 次官まで上り詰めて退職した鈴木氏は2013年、日本郵政の代表執行役副社長になった。民営化された郵政は民間出身の西室泰造氏、長門正貢氏らが「雇われマダム」のような表の社長で、裏は鈴木氏が仕切った。

 郵政組織に根を張り、「社長より偉い副社長」とさえ言われた。