「大人になったらなりたいもの」
調査に感じる、モヤモヤ感の正体
昨日、聞けば聞くほどモヤモヤしてしまう調査が発表された。
第一生命保険が昨年12月、小学3年生~高校生の3000人を対象に実施した「第一生命『大人になったらなりたいもの』アンケート」で、男子の人気ナンバーワンが「会社員」になったというのだ。
男子小学生に関しては、これまで人気だと言われていた「YouTuber/動画投稿者」(8.4%)を僅差で抑えて8.8%が「会社員」と回答した程度だが、男子中学生になるとこれが18.3%に急増。2位の「ITエンジニア・プログラマー」(6.8%)と比べてダブルスコア以上の差を広げている。その勢いは男子高校生になっても衰えることなく、22.2%が「大人になったら会社員になりたい」と回答しているのだ。
大人の階段を上るにつれて、「会社員」への憧れが強まっていくという傾向は、実は女子も変わらない。女子小学生ではやはり「パティシエ」(14.1%)、「教師・教員」(7.1%)という人気職業に押されて「会社員」(5.8%)は4位に沈んでいるが、女子中学生になると途端にごぼう抜きで1位(13.6%)となり、女子高校生になると結局、男子とほぼ変わらない20%まで上昇するのだ。
という話を聞くと、「ははあん、こいつは『日本の子どもは夢も希望もない』などとケチをつけたいのだな」と思うかもしれないが、筆者がモヤモヤしているのはそこではない。
子どもが自分のやりたいことを考えた結果、「あの会社で働いてみたい」「あの会社に入ってこんな仕事をしてみたい」という思いが芽生えるケースも多いはずだ。ましてや今はコロナ禍で、自営業者や非正規雇用の方たちが苦しい戦いを強いられているのは子どもでもわかる。安定した雇用や収入に憧れを抱くのは、人として当然だ。
では、筆者はいったい何に違和感を覚えているのかというと、「会社員」という、仕事内容を一切示していない、単なる雇用形態が「職業」として普通に扱われている日本社会のムードについてだ。
「ちょっと何を言っているのかわからない」という人のために、今回のアンケートの中で「会社員」と並べられている他の人気職業を例に説明しよう。