購入意欲がそそられず、店側だって苦しい
ユニクロは今回の件で実質値下げ
販売する店側が300円よりは298円、1000円よりは980円という値札を付けるのは、錯覚を利用した“お値打ち感”を演出するためだ。基準となる数字から少しだけ少ない数字を見せることで、「安くなった?」と感じさせ、購入欲をそそるのだ。
しかし、税込み価格が当たり前になると、なかなか98円や980円というわかりやすい数字が打ち出せない。となると、売り手側の取るべき方法は限られる。
一つがユニクロ方式だ。4月からの総額表示に先駆け、3月12日(金)から、すべての商品価格を総額表示に統一した。しかも、これまでの本体価格を、そのまま消費税込みの価格にスライドしたのだ。商品の本体価格が1990円と表示されていた場合、改定前であれば客はレジで10%の消費税を加えて2189円を払っていた。しかし、ユニクロは総額の2189円を掲げるのではなく、1990円を税込み価格そのものにした。差額の199円を実質値下げしたわけだ。「安さ」の看板を下ろすより、自社でマイナス分を負担した方が売り上げにプラスに働くとの経営判断だろう。
すでに以前から総額表示に切り替えている企業もある。例えば無印良品。消費税込み価格で、やはり1990円、2990円といった「税込みかつ端数アピール」戦略を取る。最近アウトドアで人気のワークマンも同様だ。
外食産業も、さまざまだ。ファミレスならサイゼリヤ、ガストなどを運営するすかいらーくグループはもともと税込み表記、デニーズは税抜き表示と違いがある。牛丼チェーンは、すき家と松屋は税込み表示、吉野家だけ税抜きと税込みのハイブリッド表記だ。ちなみに同じ牛丼・並盛で価格を並べると、すき家350円、松屋320円、吉野家は税抜きでは352円だが総額表示だと387円になり、かなりの差を感じてしまう。
これらの「値頃感」「安さ」を売りにする業態であれば、店側・企業側が実質値下げに動かざるを得ないのではないか。先の「1万円均一セール」は、やはり消費税込みで1万円でなければ客は集まらないだろう。結局、店側が売値を下げることで1万円きっちりに丸めることになるのではないか。消費者側にはオトクな動きかもしれないが、店側に負担を強いるのが果たして良策なのかは微妙に感じる。