ユニクロ
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消費税分の「税抜き価格」の表示特例措置終了に伴ってユニクロとジーユーが3月12日から同一価格で「税込み価格」に移行し、実質9.1%の一斉値下げを断行した。アパレル業界は、強者の仕掛けた価格競争に戦慄している。コロナ禍が長引いてアパレル業界が存亡の瀬戸際にある今、価格競争を仕掛けたファーストリテイリングの真意は、国内とアジアのライバルを“掃討”することにある。(小島ファッションマーケティング代表 小島健輔)

周到に準備された意趣返しの奇襲

 商品価格で消費税分を表示しなくてもよい「税抜き価格」表示の特例措置が3月末で終わる機会を捉えて、ファーストリテイリング傘下のユニクロとジーユーは、消費税分の一斉値引きを3月12日から始めた。

 これまでユニクロやジーユーでは、特例に沿って「税抜き価格」を表示していた。4月以降は「税込み価格」の表示が義務付けられるが、ユニクロなどは販売価格をむしろ表示価格に合わせることで、消費税分の9.1%を値下げする。これは唐突な思いつきではなく、2019年10月の消費増税直後から周到に準備されていたものと私は推察する。

 消費税率の8%から10%への増税では、当時すでに「税込み価格」表示に切り替えていた良品計画やワークマンが価格を据え置いて増税分を吸収し、売り上げを伸ばした。

 これに対し、「税抜き価格」表示だったユニクロは増税分が値上げとなり、既存直営店売り上げ(EC含む)が19年9~11月は4.1%減、12月は5.3%減、20年1月は7.9%減と落ち込んだ。この時の判断ミスに懲り、「税抜き価格」表示の特例措置が終わる今年3月末を反撃の機会と定め、満を持して決行したのが今回の「税込み価格」への切り替えという一斉値引きだったと考えられる。

 というのも、実質9.1%の値下げを吸収するには、企画・生産から物流・販売まで周到な準備が必要であり、タグの付け替えを回避するといったささいな小細工とは比較にならないからだ。

 ユニクロは毎年2月と8月に一斉に新シーズン品に切り替えるので、「税込み表示」に切り替えるならこのタイミングだとみられていた。3月12日というタイミングはライバルチェーンの対策を封じる奇襲作戦だったのではないか。実際、3月4日の発表直後はアパレル各社で対策が議題になったと聞くが、彼らには、調達済みの商品を自腹で部分的に値下げするしか手がなく、対抗できるはずもなかった。