スエズ運河で起きた巨大コンテナ船の座礁は、在任7年になるエジプトのアブデルファタハ・シシ大統領にとって、就任以来最大とも言える世界的な危機に発展した。なぜ海運の要所が寸断されるに至ったか。ここにきて、シシ氏が過去に指揮した巨額の運河拡張工事に対して厳しい視線が注がれている。シシ政権は、2015年に開通した新運河の拡張工事を経済政策の中核に据え、「エジプトの再生」を掲げていた。85億ドル(約9300億円)を投じた「新スエズ運河」計画は、中東各国の民主化運動「アラブの春」やシシ氏の権力掌握につながった事実上の軍事クーデターといった社会的混乱に、国家として区切りをつける狙いがあった。また、通航料収入の拡大を通じてエジプトを潤すとともに、世界におけるシシ氏の地位を押し上げることも期待されていた。
スエズ運河通航不能、甘かったエジプトの拡張工事
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