蔵の前に広がる田んぼ、7月蔵の前に広がる田んぼ、7月 Photo:Asahi-shuzo

淡麗辛口吟醸蔵の
35年目のリニューアル

 新潟の淡麗辛口を代表する酒「久保田」は、1985年に発売されたロングセラー商品。誕生の背景には、当時の清酒業界への危機感があった。

 価格競争が激しさを増し、質より低価格優先の酒が増加。消費者の酒離れを危惧した当時の朝日酒造の社長と工場長は、高品質な新しいタイプの酒造りに取り組んだ。

 味を決めるのに重視したのは生活者の嗜好の変化。肉体労働から知的労働へ、濃いめの味から薄味へと食が移り、淡麗辛口という新ジャンルを研究。そうして完成したのが淡麗で切れの良い久保田だ。

 飲みやすくきれいな味は瞬く間に人気が上昇、淡麗辛口ブームを起こした。今もトップブランドとして信頼され、吟醸酒が全体の約75%を占める吟醸蔵だ。

 世に出て35年がたち、さらなる時代の変化を受け、満を持して、2020年に代表銘柄をリニューアル。加えて、香りや甘味と酸味、切れを追求した純米大吟醸も発売。

 カルパッチョやタルタルステーキ、柑橘類やメロン、イチゴにも合う味で、ラベルに英語も入れ、これまで日本酒を飲まなかった層を開拓する。

 銘柄名は創業時の屋号、「久しく田んぼを保つ」と書く、久保田屋から命名された。蔵の信条に、「酒の品質は原料の品質を超えられない」とあり、1990年には理想の米を求めて、あさひ農研を設立した。

 環境保全型農業を行い、現在、作付面積は50ha。地元の契約栽培農家とも協力しながら、時代を見つめ、田んぼと共に良酒を醸し続ける。

久保田 純米大吟醸久保田 純米大吟醸
●朝日酒造・新潟県長岡市朝日880-1●代表銘柄:久保田 萬寿、久保田 千寿、久保田 碧寿、 洗心、朝日山 百寿盃●杜氏:山賀基良(朝日蔵)、大橋良策(松籟蔵)●主要な米の品種:五百万石、越淡麗