高級ホテルのラウンジよりも、
街中のカフェのほうがよい

 心が整ったら、面会場所に向かいます。

 僕は、あまり「場所」にはこだわりませんでした。

 営業マンのなかには、高級ホテルのラウンジを使う人もいます。「お客様に対する敬意を示すためには、高級な場所をご用意したほうがいい」「営業マンとしてよいサービスをするには、自分もよいサービスを受ける経験をしたほうがいい」といった理由があるからで、「なるほどな……」と思って、当初は、僕もそれにならっていましたが、かなり早い段階でこだわらなくなりました。

 なぜなら、毎回、高級ホテルのラウンジを使っていたら経費が「バカ高く」なりますし、同業者にもよく会って挨拶されるので落ち着かないからです。

 それに、「場所」の力を借りなくても、自分にしかできないような方法でお客様にサービスできるようになったほうがいい。自分自身の「価値」は、高級な場所で商談することや、高級なブランドを身に着けることからではなく、自分自身から滲み出てくるものなのです。

 そんなわけで、高級ホテルのラウンジを使うのはやめて、広くて静かなスペースを確保できる街中のカフェを利用するようになりました。普通のカフェでも、快適なスペースさえ確保できれば、お客様に対して失礼にはなりません。しかも、駅から近いカフェのほうが、お客様にとっても便利だと考えたわけです。

 もちろん、遅くとも、約束の時間の10分前には着席します。

 そして、お客様がいらしたら、立ち上がって、目を見てしっかりと挨拶をします。いろいろな邪念を捨てて、「お目にかかれて嬉しいです」という思いだけを胸に、とにかく気持ちよく挨拶をすることを意識していました。

程よい「緊張」は、
営業マンの味方になってくれる

 挨拶が済んで席についたら、いよいよ本番です。

 初対面ですから、どうしたって緊張しますが、それを打ち消そうとする必要は全くありません。

 むしろ、僕は程よい「緊張」は、営業マンの味方になってくれると思います。誰でもそうだと思いますが、初対面なのに、やけに馴れ馴れしい人に対しては、「なんだか失礼だな」という印象をもつものです。だから、やたらと“場慣れ”したように振る舞うのは逆効果。少々緊張しているくらいが、お客様に好印象をもってもらいやすいのです。

 大事なのは、面会という場をとにかく楽しむことです。

 その邪魔をするのは「売りたい」「売らなければ」という邪念。そんなものはさっぱり捨てて、目の前のお客様と心を通わせて、一緒に楽しいひと時を過ごすことだけ考えればいい。そして、「この営業マンと一緒にいたら楽しいし、前向きな気持ちなる」と思っていただければ、それだけでも面会は大成功。ひとりの人間として受け入れていただければ、自然と仕事はうまく行き始めるのです。

 そもそも、考えてみれば、「保険の営業」という形ではありますが、地球上に何十億人もいるなかで、二人が巡り会うというのは奇跡的なご縁です。そのかけがえのないご縁を、よりよいものにしたいと思えばいい。そのためには、「保険」のことなど、忘れてしまうくらいのほうがいいのです。

 では、どうやってお客様と心を通わせるのか?