簡単です。「共通点」を探せばいいのです。

 相手との距離を近づけるコツは、とにかく共通点を見つけること。出身地でも、趣味やスポーツでも、大学でも、子どもでも、美味しい食事でもなんでもいいので、お互いに深く話せる「共通の話題」を見つけることに尽きます。

 もちろん、共通点を探すために、お客様から不躾に「聞き出そう」「探り出そう」とするのはダメ。そうではなく、はじめは当たり障りのない話題を提供しながら、お客様と言葉のキャッチボールをします。自分が興味のある話題を、広く浅く「面」で展開していくイメージです。

 そして、さりげなくお客様の反応を観察します。

 何かの話題に触れたときに、グッと身を乗り出したり、声のトーンが上ったり、パッと表情が明るくなるような瞬間があるはずです。それは、お客様が興味をもっている話題である証拠。その「点」を見つけ出すことさえできれば、あとは、その「点」を掘り下げていけば、確実にお客様との会話は弾みます。そして、距離をグッと縮めることができるのです。

 このように、僕は、初対面のお客様とお話するときは、「面」で会話をしながら「点」を探すことをイメージしていました。これは、非常に有効なので、ぜひ意識していただければと思います。

お客様に純粋な関心をもつことが、
営業で成功する「秘訣」である

 共通点を知るために、事前に準備をしておくことも大切です。

 あらかじめ、お客様のことを可能な限り調べておくのです。誰かからのご紹介であれば、紹介者にその方のことを教えてもらえばいいし、今の時代、ネットで検索すればなんらかの情報が手に入るものです。SNSをやっていらっしゃる方ならば、そこからかなり深い情報を得ることもできます。そうして、その方との共通点に”あたり”をつけておくことができるわけです。

 これが功を奏して、ある有力な経営者と一発で懇意になったこともあります。

 その方とお目にかかれるチャンスがあったので、インターネットで情報を検索しました。すると、甲子園球児で、しかも準優勝していると書いてあります。これは、絶対に”ツボ”です。僕も、中高で野球をやっていましたから、これ以上ない共通点が見つかったわけです。

 もちろん、お目にかかったときに、いきなりその話を持ち出すのは不自然です。

 だから、最初は、自己紹介をかねて、僕がTBSを辞めて保険営業をしている理由などについてお話をしました。すると、「へー、それは思い切ったね」と、少し僕に対する興味をもっていただけたようでしたので、「ここだ!」と思って、「野球をやられてたんですね?」と話を振ってみました。

 僕がアメフトをやっていた話をした直後でしたから、野球の話を持ち出しても不自然ではありません。はじめは、その方も「まぁね」くらいの反応でしたが、話の流れはできました。

 そこで、「甲子園に出られてるって、すごいですね。僕も中高と野球をやってたんですが、甲子園は遠かったですよ」と言うと、「お、知ってるんだな?」という感じで嬉しそうな表情に変わります。すかさず、「しかも、準優勝って本当にすごい」と本音を伝えると、満面の笑みを浮かべられました。

 それは、心を開いてくださったサインです。あとは、「どんな練習をされていたんですか?」「厳しい局面はどういう心構えで臨まれるんですか?」などと質問をすれば、どんどん話をしてくださるようになりました。そして、面会が終わる頃には、もう長年の知人のような距離感になっていたのです。

 このように、共通点を見つけ出すことは、非常に大きなパワーを僕たちにもたらしてくれます。そして、共通点を見つけ出すためには、「売ろう」という気持ちを捨てて、人間としてのお客様に純粋な関心をもつことに尽きます。その意味では、お客様に関心をもつことこそが、営業で成功する「秘訣」と言えるのかもしれません(詳しくは、『超★営業思考』に書いてありますので、ぜひお読みください)。