“引き締まった乗り心地”で
街乗りまでこなす
試乗車はM5コンペティションだった。エクステリアでは、ハイグロス・ブラック仕上げのキドニーグリルやフロントフェンダー後方のアウトレット、サイドミラー、リヤスポイラーなどが特徴だ。
パワートレインはM社製4.4リッターV8ツインターボエンジンに8速ATを組み合わせる。ベースモデルのM5が最高出力600psなのに対して、コンペティションは25psアップの625psに、最大トルクは変わらず750Nmで、0-100km/h加速は3.3秒と驚くほどに速い。駆動方式はM専用にセッティングされた「M xDrive」と呼ぶ4輪駆動で、DSC(ダイナミック・スタビリティ・コントロール)をオフにした場合にはFR(後輪駆動)に切り替えが可能という、Mモデルらしいこだわり仕様だ。
エンジンやシャシー、ステアリングの特性は、それぞれ「コンフォート」(エンジンはエフィシエント)、「スポーツ」、「スポーツプラス」のモードがあり、任意の組み合わせをステアリングの左右に備わるM1、M2ボタンに記憶させることが可能。
コンフォートモードなら硬すぎるということはなく街乗りも何ら問題なくこなせる。ただし、その筋肉質で引き締まった乗り心地から、そして600ps超の強心臓の魂動からは只者ではないことが伝わってくる。その一方で、渋滞時には限りなく自動運転に近い手ばなし運転もできる最新安全性能も備えたというのだから、その振り幅の広さには驚くばかり。“羊の皮を被った狼”のコンセプトは、最新モデルであっても健在なのだ。
文/藤野太一 写真/デレック槇島、ビー・エム・ダブリュー 編集/iconic