左遷写真はイメージです Photo:PIXTA

春は人事の季節。社員は「栄転」「転勤」「出向」など、同僚や自分の異動の話でもちきりとなる。もちろん「左遷」で割を食ったと不満を持つ社員も出てしまう。左遷とは何か?なぜ左遷だと感じるのか?かつて人事異動を担当した経験と、日本型雇用の特徴から読み解いてみよう。(神戸松蔭女子学院大学教授 楠木 新)

人事を語りたくなる心理とは?
「組織の論理」×「社員の心理」=「左遷」

 春は、人事の季節。4月の定期異動で新たな職場に着任して、やっと慣れたという人もいるかもしれない。定期異動の前後では、「栄転」「左遷」「転勤」「出向」などの言葉が飛び交い、人事異動に対して講釈を垂れる「1日人事課長」まで登場する。また、他人の異動を語る人の顔は、なぜかうれしそうなのが特徴だ。

 以前に上梓した『左遷論』(中央新書)を執筆するにあたって、菅原道真や森鷗外などの歴史上の人物の左遷や、テレビドラマ『半沢直樹』の左遷の事例を調べ、日本企業のみならず、外資系企業の人事担当者、キャリア官僚の元人事課長にも取材を行い、「左遷された」という会社員にも個別にヒアリングを行った。

 左遷とは、一般的に「人事異動などによって、今までより低い役職や地位に落とされること」といわれている。面白いのは、左遷は組織側の論理と社員側の心理との交差点であることだ。そのため、左遷に遭遇することによって新たな働き方を見つける社員も少なくない。