インフレ時代への大転換、5つの予兆
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――筆者のジェームズ・マッキントッシュはWSJ市場担当シニアコラムニスト

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 金融は一世一代の転換点に差し掛かっているのかもしれない。政治、経済、国際関係、人口動態、労働 ―― その全てがインフレを後押しする方向へとシフトしている。物価上昇との闘いを優先する政策は40年以上も続いたが、もはや米国のみならず世界の多くの国で、投資家と消費者に優しい解決策は時流の先端ではなくなりつつある。

 歴史的な転換点を見極めるのが極めて難しいせいか、投資家はそうした転換にまるで無防備だ。今回も誤認警報なのかもしれないし、展開には何年もかかるだろう。だが、全体的なシフトを示す兆候は、5つの面で如実に表れている。

1)FRBなど中銀はインフレさほど懸念せず

 世界金融危機以降、政策当局者はインフレ率が目標を上回るより下回るのを心配することに、はるかに多くの時間を費やしてきた。しかし最近になって、目標を離れる決定的な措置を講じている。米連邦準備制度理事会(FRB)は平均インフレ率2%という、比較的達成しやすい新目標を採用。過去10年の未達分を埋め合わせるため、何年間かオーバーシュートさせられるようにした。

 さらに、予測に基づきインフレに先んじて行動することに重点を置く姿勢から、実際にインフレが到来するまで待つ姿勢に変わった。エコノミストのミルトン・フリードマン氏が強調したように、金融政策による経済への影響は長期かつ変化しやすい遅れがつきまとうことはよく知られており、こうした姿勢の転換によって、FRBがインフレ上昇の抑制で後手に回る可能性は高まる。

 現在は財務長官を務めるジャネット・イエレン元議長とジェローム・パウエル現議長の下で、FRBは過去には二次的な目標として扱っていた完全雇用にも力を入れている。特に、景気を浮揚させる上で、人種的マイノリティーなど取り残された労働者への恩恵に着目している。その裏返しとして、FRBが景気を抑制する段になれば、こうしたグループは自分たちがFRBの引き締めで最初に打撃を受けると気づくだろう。このためFRBにとっては、急速な利上げは通常以上に賛否両論を巻き起こしかねない。