退職金は“ご褒美”ではなく、社内で蓄えた定期預金の満期だと考えた方が良い。退職する前から「自分は多額の社内預金を持っている」との発想で老後資産を組み立てた方が安全だ。(経済評論家 塚崎公義)
退職金を“ご褒美”だと考えると危険
多くのサラリーマン(女性を含み、公務員等を含む。以下同様)にとって、退職金は初めて手にするまとまった大金かもしれない。それゆえに、急に自分が金持ちになったような錯覚に陥って思わぬ失敗をする場合も多いと聞く。
大金を手にしたことで、世界一周旅行に行きたくなったりする人も多いようだ。「長年自分を支えてくれた妻への感謝の気持ちとして、大きなプレゼントをする」といった厚意それ自体に反対するつもりはないが、その意思決定の裏側に「自分が長年にわたり頑張って働いた褒美をもらったので、妻にも分けてあげたい」などと考えているのであれば、それは危険かもしれない。
褒美をもらったと考えると、通常の給料をもらったときよりも財布のひもが緩みやすくなるからだ。人間は、苦労して稼いだ金と偶然得られた「あぶく銭」があると、後者の方が散財しやすい。
合理的に考えれば、金には色がついていないのだし、どちらも同じ価値なのだが、競馬競輪で大穴を当てた人がぜいたくをして全部使ってしまったという話は珍しくないので気を付けたい。