男兄弟よりも少しだけ我慢を強いられる、チカンに遭っても逆に「スカートが短い」と小言を言われる、「賢すぎる女は持て余す」と煙たがられる……。似たような経験があると思い当たる人は少なくないのではないだろうか。
こうした女性ゆえに押しつけられる理不尽な言動を丁寧に拾い集め、「キム・ジヨン氏」という架空の韓国女性のライフストーリーとして編み上げたのが、昨年映画化もされた小説『82年生まれ、キム・ジヨン』(訳・斎藤真理子、筑摩書房)だ。韓国人作家のチョ・ナムジュさんによる同作は、韓国で135万部以上、日本でも韓国文学としては異例の22万部を超える大ベストセラーになった。
『82年生まれ、キム・ジヨン』を読み終えると作中のエピソードに共感すると同時に、今までとくに意識もせず自然に受け流していた問題が多いことに驚くのではないだろうか。成長とともに、私たちは諦めることを覚えていく。でも、それはいつからだろう。そんな問いに答えてくれるチョ・ナムジュさんの新作小説が『ミカンの味』(訳・矢島暁子、朝日新聞出版)だ。