そこで、「中国で勝ち抜くためのスピード、コスト、経営スタイルを実現するべく、中国・北東アジア社を設立することが決まった」(本間氏)。本間氏が社長を務める中国・北東アジア社はグループ全体で77社、5万3000人の従業員を抱え、域内販売1兆円、域外輸出7000億円の事業規模を持つ。

 特徴は、「域内販売する商品の企画・開発から、デザイン、製造、販売まで、人・モノ・金の決定権は中国・北東アジア社にあり、日本の本社に頼らず全てを決められる仕組みにある」。チャイナスピード、チャイナコスト、チャイナスタイルを実現するためだ。

 幸之助氏は、海外進出においては「その国で歓迎される事業を行うこと」を基本としていた。中国・北東アジア社でもその方針を受け継ぎ、2つの重点事業を推進している。それが、スマートライフ家電事業部と住建空間事業部が軸となる「くらし空間」、コールドチェーン事業部を中心とする「生鮮食品サプライチェーン」の2つの事業だ。

「くらし空間」の事例として本間氏は、江蘇省宜興市で地元デベロッパーが進める大規模開発への参画を紹介した。これは、400万平方メートルの広大な用地に、住宅・養老・娯楽・教育などの施設を開発する一大プロジェクトだが、パナソニックは「健康寿命が10年長い街づくり」をコンセプトとして、全体の3分の1に企画段階から参加、さまざまな商材とノウハウを提供している。

 商業施設では自動ドア、冷蔵冷凍ショーケース、業務用空調システムなど、1170戸の戸建て・集合住宅では照明、システムキッチン、食洗機、冷蔵庫、熱交換システム、浄水システムなど、至る所でパナソニック製品が採用されている。

 今後は、住民が自らの健康データを収集し、スマートフォンで管理できるシステムを納入し、医療機関やスポーツジムなどと連携しながら、健康増進に役立つ各種のサービスを提供していく計画だ。