ダノンファベール元CEOの退任劇は、ESG/SDGs経営を重視し始めた多くの日本企業にとっても、他人事ではないPhoto:123RF

ダノンCEOが解任
問われる「企業の目的」

 フランスの食品大手、ダノンのエマニュエル・ファベール会長兼最高経営責任者(CEO)が、3月17日の取締役会で退任した。背景には、モノ言う株主であるアクティビストファンドが業績不振を理由に退任を迫ったことがある。

 アクティビストファンドから業績不振を問われ、トップが退任する話はよくあることだが、今回の退任劇が注目を集めるのは、ファベール元CEOがESG(環境・社会・ガバナンス)重視の経営を提唱する世界的なオピニオン・リーダーであったからだ。

 コロナ禍の世界では、短期的な成長よりも、長期的かつ持続可能な成長を志向する潮流や、ESG重視の経営スタンスが注目されている。筆者が教えるビジネススクールの講義でも、グローバル企業が配慮するべきステークホルダーの広がりは注目のトピックであり、ダノンはその中でも最も先進的な企業の1つとして紹介されてきた。

 それだけにファベールCEO解任劇は、上場企業の社長が業績不振を理由に株主から退任させられたというだけにとどまらず、「企業の目的は何か?」という本源的な問いかけを改めて私たちに突きつけている。以下では、ダノン・ファベールCEO解任が提起する問題について考えてみよう。