2年前に定めた「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD(ビューティーイノベーションでよりよい世界を)」が同社のミッションであり、パーパスだ。「化粧品を売るのが当社の目的ではない。美の力で人々を元気にしたい、幸せな人生を送ってもらいたい。それを実現するのが資生堂の存在意義だ」と魚谷氏は言う。

 年に一度、世界中の幹部が集う「グローバルカンファレンス」でも、魚谷氏は業績目標については一切話さない。その代わり、パーパスに関して繰り返し語りかけ、組織全体への浸透を図っている。

松下幸之助氏が約束した中国の発展への貢献

写真:パナソニックの本間副社長

 2019年から中国・北東アジア総代表として中国に駐在するパナソニック副社長の本間氏は、北京から、同社の中国におけるサステナブル経営の取り組みについて語った。

 パナソニックと中国の付き合いは長い。1978年に中国副首相(当時)の鄧小平氏が、松下電器産業(現パナソニック)の工場を訪れ、創業者の松下幸之助氏が中国の発展への貢献を約束して以来だ。

 87年にはブラウン管製造の合弁会社を設立し、中国での事業がスタートした。幸之助氏の著書は中国の政財界で広く読まれており、最も有名な日本人経営者と言っていいだろう。だが、パナソニックの中国事業は近年、売り上げが伸び悩んでいた。

 パナソニックの経営陣は議論を重ね、「スピード」「コスト競争力」「経営スタイル」の3つが現地企業に劣っていることが、伸び悩みの原因だという結論に達した。